提婆達多(ダイバダッタ)とは?

提婆達多」は、仏教で教えられる最大の極悪人です。
非常にすぐれた人で、当時のインドではブッダに次ぐ2番目の存在でした。
ところがねたみの心から仏教史上最大の悲劇を引き起こし、
ブッダを殺そうとした最も有名な仏敵です。

一体どんなことがあったのでしょうか?

提婆達多の生い立ち

提婆達多(ダイバダッタ)は、略して提婆(ダイバ)ともいわれ、
調達(ちょうだつ)ともいわれます。
約2600年前、インドの白飯王の長男として生まれました。
やがては王さまの後を継ぐ、王子さまです。

白飯王は、やがてブッダになる
シッダルタのお父さん、浄飯王の弟なので、
ブッダとはいとこにあたります。

そして、釈迦十大弟子の一人、
阿難尊者のお兄さんでもあります。

生まれつき勉強もスポーツも抜群で、
他の追随を許しませんでした。

また、少し寂しがり屋さんなところもあり、
みんなにかまって欲しい気持ちや
人気者になりたい気持ちから、
少しでも目立つように、いつも能力を磨いて
リーダーシップをとっていました。

勉強もスポーツもいつも2番

同じ釈迦族の王子なので、
小さい頃からシッダルタと共に勉強もスポーツも学び、
ライバルとして競い合ってきたのですが、
さすがの提婆達多も、シッダルタにだけは勝てません。

何とかシッダルタに勝とうと、
普段から勉強しているのですが、
テストを受けると、いつも2番です。

何で勝てないんだ
と悔しがって猛勉強しますが、
それでも2番です。

スポーツでも同じです。
極めてすぐれた運動神経を持ち、
武芸もめきめき上達しますが、
シッダルタにだけは勝てません。

2番だとどうしても目立たないので、
悔しくて悔しくて仕方ないのですが、
いつも2番に甘んじていました。

恋のライバル

やがて成長し20歳ごろになると、
同年代でインド一の美女であるヤショダラ姫に
すっかり惚れてしまいます。

提婆達多は盛んにアプローチしますが、
やはり二番手では分が悪い。
ヤショダラ姫はいつも一番のシッダルタになびきます。

美しいヤショダラ姫にすっかり心を奪われていた提婆達多は、
ヤショダラ姫を手に入れるには自分が一番になるしかない
と、ついにシッダルタに決闘することにしました。

さっそく他の参加者も募って、浄飯王主催の
優勝者がヤショダラ姫を妻にする
という全国競技大会が開かれます。

やがて国中から地区大会を勝ち抜いた強者たちが集まり、
武芸だけでなく、学問も含めた様々な種目で争われました。

書道や数学から始まり、弓術の競技になります。

ここで提婆達多は、なんと400m離れた的を射貫く快挙を成し遂げました。

ところが、シッダルタの番になると、
1キロ離れた的を射貫きます。
その人間離れした腕前に、あえなく惨敗でした。

そして象の乗りこなし、流鏑馬など、
次々と競技を行いますが、すべての競技でかないません。
やがてついに組み手の種目になると、
提婆達多の相手は、念願のシッダルタとなりました。

試合が始まると同時に、
提婆達多はダッシュでシッダルタに突撃します。
ところがシッダルタは、
おもむろに提婆達多を右手に押さえ、
落ち着いて投げ飛ばしてしまいました。

こうして提婆達多は、残念ながら
すべての種目でシッダルタに負けてしまいます。
とうとうヤショダラ姫は、シッダルタと結婚することになったのです。

恋人争いに破れた提婆達多は
すっかり落ち込んでしまいました。

このようにシッダルタとは若い頃から色々な因縁があったのですが、
提婆達多もシッダルタをライバル視するほど優れていたので、
当時のインドでは特に輝いていました。

そして、シッダルタが29歳で出家してしまうと、
ついに提婆達多が釈迦族の未来を担う期待の星となったのです。

ブッダの弟子になる

ところがそれも6年間だけのことでした。
シッダルタが35歳で仏のさとりを開き、
ブッダになると、もはや足下にも及ばなくなります。
いくらインドの星でも、太陽が出ると、
星はかき消されてしまうのです。

ブッダが仏のさとりを開かれて3年後、
釈迦族の国に帰ってこられたとき、
提婆達多も王子の座を捨てて出家し、
ブッダの弟子となります。
そして、12年間は真面目に厳しい修行に打ち込みました。
もともとすぐれた才能を持っていたので、
神通力も習得しました。

ところがやはり
ブッダを超えたい
というライバル心は捨てられず、
虎視眈々とチャンスをうかがうようになります。

仏教史上最大の悲劇を引き起こす

やがて縁あって、
当時インド最強だったマガダ国の王子
アジャセと、神通力を使って親しくなりました。

やがてアジャセからの
たくさんのお布施を受けるようになり、
弟子を持つようになります。

当時最強のマガダ国の王子からの帰依を受け、
弟子も増えてくると、
自分はかなりいけてるんじゃないか
という自惚れ心が起きてきます。

勢力を拡大するにつれて態度も大きくなり、
野望も膨らんでいきます。
やがてアジャセがマガダ国の王になれば、
世界最強の国王が私の言う通りになる。
そうなれば私は教団の指導者になれる。
もうその時期が来ているのではないか

と考えて、アジャセに父親のビンバシャラ王を
殺したくなるように八百を持ちかけます。

単純なアジャセはまんまと口車に乗せられ、
ビンバシャラ王をマガダ国の首都、王舎城にある牢屋に幽閉して
殺してしまい、王位につきます。
これが『涅槃経』や『観無量寿経』に説かれる
仏教史上最大の悲劇、「王舎城の悲劇」です。

ブッダ暗殺計画

提婆達多は同時に、
ブッダを殺す暗殺計画を展開します。

ブッダは霊鷲山という山で『法華経』や『大無量寿経』など、
たくさんの教えを説かれたので、その下を通られたとき
霊鷲山の上から巨大な石を転落させ、事故死に見せかけて
殺そうとします。

幸い巨石はブッダにあたらなかったものの、
破片があたり、ブッダの足から血が流れました。
こうして提婆達多は「仏身より血を出す」という
無間地獄に堕ちる五逆罪という大罪を造ったのです。

それでも提婆達多は諦めず、
ブッダが王舎城に入られたとき、
酒を飲ませて狂った象を解き放ち、
襲わせます。

ところがブッダに向かって行った象は、
ブッダの生きとし生けるものすべてに
慈悲をかけられる尊いすがたに見ると、
子犬のように「クーンクーン」となついてしまい、
計画は失敗に終わりました。

獅子身中の虫

さらに提婆達多は、自分の教えを唱え始め、
たくさんの弟子の中でも4人の幹部と共に、
ブッダの教団を分裂させようとします。

仏教の教えを伝える集まりの力が弱まると、
教えが伝わらなくなってしまいますから、
その団結を乱すのは仏教で大変な罪とされています。

百獣の王である獅子には外には恐れるものは何一つありませんが、
自らの体の中にわく虫に倒されるように、
仏教を滅ぼすものは仏教の中にあります。

このように仏教をねじ曲げて破壊する僧侶を、
獅子身中の虫」といわれます。

ここでも提婆達多は、無間地獄に堕ちる五逆罪の一つ、
和合僧を破る」という大罪を造ったのでした。

提婆達多の壮絶な最期

やがてブッダが『観無量寿経』を説いて
アジャセの母親、韋提希夫人を本当の幸せに導くと、
やがてアジャセもブッダに帰依します。

提婆達多にとっては、スポンサーを奪われ、
大教団を指揮する夢も破れますから、
すべてがぶち壊しです。

アジャセがブッダに帰依したというニュースを聞いたとき、
提婆達多は
何?それはまことか!
怒り心頭に発します。

くーっ……
歯を食いしばり、真っ青な顔で
自分の爪に丁寧に猛毒を塗ります。

提婆達多はインドではブッダに次ぐ2番目の賢者なのですが、
もはや巧妙な計画も何もありません。
10本の指の爪に毒を塗り終わると、
うわーっ」と叫びながら
ただただブッダのもとへ走っていきます。

やがて祇園精舎におられたブッダを見つけた提婆達多は、
キーッ」と叫びながら
ブッダに飛びかかり、
ひっかき殺そうとしたのです。

ところが、ブッダしか目に入っていなかった
提婆達多は、足下の石につまずいて地面に手をついてしまい、
爪がはがれて自分の体に毒が回り、
体が焦げるように苦しみながらその場で息絶えてしまいます。

それが、狂い死にしたとも、
生きながらにして、大地が割れて無間地獄に堕ちた、
とも伝えられる、提婆達多の最期でした。

提婆達多は何者だったのか

このように、ブッダを殺そうとして血を流させ、
仏教の教えを曲げて仏教の教団の団結を乱した
獅子身中の虫である提婆達多は、
仏教では極悪人とされています。

ところが、ブッダはなぜそんな者のことを
お経に説かれているのでしょうか?

仏教を聞くときは、他人事ではなく、
自分のこととして聞かなければなりません。

ブッダは、すべての人は五逆罪、謗法罪の極悪人だと
涅槃経』に教えられています。
提婆達多はすべての人の姿であり、
縁さえあればどんなことでもする
煩悩の塊が私たちなのです。

提婆達多はとんでもないことをしたんだな
あんなことまでは私はしない
という心がある間は、
自分の心が見えていませんから、
本当の幸せにはなれません。

提婆達多が救われても、私だけは地獄行きと知らされたとき、
苦悩の根元が断ち切られ、煩悩あるがままで
未来永遠の変わらない幸福になれるのです。

ではその苦悩の根元とは何かということは、
仏教の真髄ですので、小冊子とメール講座にまとめておきました。
一度見ておいてください。

関連記事

目次(記事一覧)へ