戒律とは

仏教では、在家の人には五戒という5つのルールがあります。
出家して僧侶になるには、「具足戒(ぐそくかい)」を守らなければなりません。
具足戒には、男性なら二百五十戒、女性なら三百四十八戒あります。
(女性の三百四十八戒は、きりのいい数字で「五百戒」ともいわれます)
さて仏教の戒律は、一体どんな内容なのでしょうか?

戒律の働き

戒律」の「」と「」ではもともとは意味が違います。
」は、さとりを目指して個人的に頑張る決まりです。
善い習慣のようなものです。
」は僧侶の集まりの生活上のルールで、罰則があります。
学校でいえば校則みたいなものです。
しかしこの2つは混同されて、
男性の僧侶の二百五十戒は正確には「」ですが、
二百五十戒」とも「具足戒」ともいわれます。

『首楞厳経』に
心を摂するを戒と為す。戒によって定を生じ、定によって慧を発す
と説かれているように、仏教では、さとりを目指すのに、
戒・定・慧(かいじょうえ)」の「三学(さんがく)」が必要です。
戒律は、さとりを求める上で、非常に重要なのです。

在家の人の戒律

では、仏教の戒律は、具体的にはどんな内容なのでしょうか?

五戒(ごかい)

まず、在家の人でも守らないといけないのが、
五戒」です。

在家の男性は「優婆塞(うばそく)」
在家の女性は「優婆夷(うばい)」
といわれますので、「優婆塞戒」とか「優婆夷戒」ともいわれますが、
どちらも以下の同じ5つの決まりです。

1.殺生…生き物を殺さない
2.不偸盗戒…他人のものを盗まない
3.不邪淫戒…不倫や浮気をしない
4.不妄語戒をつかない
5.不飲酒戒…お酒を飲まない

ところが、実は在家の人でも、
まだ時々守らなければならない戒律があります。
それが八戒です。

八戒

八戒は、「八戒斎(はっかいさい)」ともいわれ、
在家の人が毎月6日間、一日一夜行います。
この6日間は、8日、14日、15日、23日、29日、30日で、
これを「六斎日(ろくさいにち)」といわれます。

この日は、在家の人も、五戒の中の不邪淫戒が
不淫戒になります。不倫や浮気だけではなく、
配偶者でもアウトです。

さらに五戒に加えて、
6.香油塗身戒(こうゆずしんかい)…化粧・装身具を使わない。
7.歌舞観聴戒(かぶかんちょうかい)…歌や踊りなど娯楽を見聞きしない
8.高広大床戒(こうこうだいじょうかい)…快適なベッドを使わない
9.非時食戒(ひじしきかい)……午後以降、明朝まで食事をしない
が加わります。

八戒なのに9箇条あるのは、
9番目は「」といわれて、八戒斎となります。

出家の人の戒律

十戒

20才未満で出家したい人は、
男の子は「沙弥(しゃみ)」
女の子は「沙弥尼(しゃみに)」となります。

その場合は、責任もって面倒をみる阿闍梨と、
戒律を授ける戒師が必要です。
戒師は阿闍梨が兼ねることができるので、
最低限1人の阿闍梨が必要です。

戒律としては、八戒斎に
以下の1つ加えた十戒を守ります。

10.捉金銀宝戒(そくこんごんほうかい)…お金に触れない・所有しない

具足戒

大人が出家するときには、受戒しなければなりません。
受戒には、僧侶になった後、責任を持って指導する和尚と、
受戒の儀式を主催する羯磨阿闍梨、
受戒する人に問題がないか調査する教授阿闍梨の3人と、
立ち会う僧侶7人の合計10人の僧侶が戒壇上に立って
儀式をする必要があります。
これは地方なら5人でも可能ですが、
それでも最低5人の僧侶が必要です。

このような受戒をした人が、出家僧侶です。

男性250戒、女性348戒あります。

一番重いのは、永久追放になる4箇条があります。
男女の交わり、殺人、大泥棒、大嘘の4つです。

次に重いのは7日間懺悔するもの13箇条があります。
誤って異性に触れる、規定以上の大きさの家に住むなどです。

その次は、所有に関する罪30箇条で、
所有し過ぎたものは没収になります。

僧侶は三衣一鉢で生活しなければならないので、
例えば4着目以上の衣や、2個目以上のお碗は没収です。
もちろんお金は所有してはいけないので没収です。

その次は90箇条あります。
や、両舌、飲酒、非時食などがあります。
ちなみに前のと合わせてこれら120箇条の規則には
地獄に堕ちる罪」という名前がついています。

その他にも、あと113あります。

女性の場合、永久追放になる罪も、
7日間懺悔になる罪も、4箇条ずつ増えます。

その他、男性より100箇条近く増えます。

この具足戒を守る人が、出家僧侶であり、
女性なら尼さんです。

大乗仏教の戒律

中国では、天台宗でも禅宗でも浄土宗でも、
出家すると具足戒を受けます。
ところが日本では、「大乗戒」を受けます。

大乗戒とは、「菩薩戒」ともいわれ、
その内容は「三聚浄戒(さんじゅじょうかい)」です。

三聚浄戒」とは、
1.摂律儀戒(しょうりつぎかい)…悪いことをやめる
2.摂善法戒(しょうぜんぽうかい)…善いことをする
3.摂衆生戒(しょうしゅじょうかい)…苦しむ人に仏法を伝えて救う
の3つです。

1番目の摂律儀戒が、五戒・八戒・十戒・具足戒
とされることもありますが、天台宗を日本に伝えた最澄は、
梵網経(ぼんもうきょう)』の
十重禁四十八軽戒(じゅうじゅうごんしじゅうはちきょうかい)」として、
具足戒をやめました。
これを「梵網戒(ぼんもうかい)」「円頓戒(えんどんかい)」ともいいます。

十重禁四十八軽戒」とは、
十重禁戒(じゅうじゅうごんかい)」と
四十八軽戒(しじゅうはちきょうかい)」の
2つです。

十重禁戒」は、以下の10項目です。
1.殺戒…生き物を殺さない
2.盗戒…他人のものを盗まない
3.婬戒…性的な男女関係を持たない
4.妄語戒を言わない
5.酤酒戒…酒の売買をしない、もちろん飲まない
6.説四衆過戒…他人の過ちを非難しない
7.自讚毀他戒…もの惜しみをしない
9.瞋心不受悔戒…怒らない
10.謗三宝戒…仏・法・僧の三宝を軽んじない

四十八軽戒」は、四十八箇条あるので省略しますが、
肉を食べないとか、にらなどを食べてはならない、
戒律を破った人を見過ごしてはならない、
捕まっている動物は逃がさなければならない
犬や猫を飼ってはならない
仏教講座が開かれているのに欠席してはならない
などがあります。

さらに厳しいものとしては、
新人はまず身体や腕、指を焼いて諸仏に布施しなければならない」とか
大乗の戒律を、自分の皮をはいで、自分の骨を筆として、自分の血で書写しなければならない
というものすごいものもあります。

このように、大乗仏教の戒律が、
具足戒を採用しないからといって、
簡単なわけではありません。

小乗仏教と大乗仏教の違い

果たしてこれらの戒律は、誰か実行可能なのでしょうか?

仏教では、私たちの行いを、心と口と身体の3方面から見られ、
中でも心を最も重く見られます。

殺生戒であれば、
生き物を実際に殺すのはもちろんだめですし、
口で「殺してやるー」と言ってもだめです。
さらに、心の中で「死ね」とか「死んでくれたらいいのに
と思ったら、心で殺す殺生罪です。

また、肉屋さんや魚屋さんが殺した肉を
美味しそうだ」とか「食べたい」と思ったら、
もうアウトです。

大乗仏教では、このように心を最も重視するのですが、
小乗仏教の具足戒では、口と身体だけ守れば、
心は守らなくても問題にされません。

口や身体で守るだけでも大変ではありますが、
心を重視するお釈迦さまの教えからいえば、
形だけになっています。

戒律を守るなら、当然心まで守らなければ
教えにしたがっていることにはなりません。
では、心まで守れるのでしょうか?

戒律が守れなければ助からない?

仏教で説かれる戒律は大変厳しく、
天台宗を日本に伝えた最澄は、
末法には、戒律は存在しないから、破戒もないし、
もし持戒の人がいたら、
市場に虎がいたような驚くべきことで、
誰も信じないだろうといっています。

このような厳しい決まりは、
とても守れるものではありません。

これでは、もし戒律を守らなければ助からないとすれば、
誰も助からなくなってしまいます。
もちろん仏教はそんな教えではありません。

お釈迦さまは、すべての人が本当の幸せになれる教えを
説かれていますので、仏教には、
戒律を守れない人でも、すべての人をありのままで救う道が説かれています。

それについては、仏教の真髄なので、
小冊子とメール講座にまとめておきました。
一度見てみてください。

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