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生きる意味を、知ろう。

出家とは

出家」とは「家出」と似ていますが、
子供の家出とはわけが違う、大変厳しいものです。
それにもかかわらず、人気の芸能人や有力な政治家が出家したりします。
本来、出家とはどんなもので、どうすれば出家できるのでしょうか?

出家の意味

出家とは何か、参考までに辞書を見てみます。

出家
しゅっけ[s:pravrajyā, p:pabbajjā]
家庭生活を捨てて遍歴遊行ゆぎょう生活に入る意で、世俗を離れ、修行しゅぎょう者の仲間に加わること。
仏教教団において受戒じゅかいし、正式の修行者となることをいうが、広く剃髪ていはつして仏門に帰した僧尼(s:pravrajita, p:pabbajita)の称ともする。
在家ざいけの対。
インドでは、紀元前5世紀頃、婆羅門教ばらもんきょうの伝統的権威を認めない<沙門しゃもん>と呼ばれる自由思想家たちが現れ、解脱げだつへの道を求めて哲学的思索や苦行くぎょうなどの修行にいそしんだが、彼らはそのために出家することを旨とした。
有力な沙門のもとには多くの弟子が集まり、出家者集団を形成したが、釈迦しゃかもそのような沙門の一人であった。
仏教における出家の伝統はこれに由来する。
仏教では、出家者は在家者を教え導き、在家者は出家者を経済的に資助するものとされ、出家の精神的優位が説かれたが、紀元前1世紀頃に始まった大乗仏教においては、菩薩ぼさつによる衆生済度しゅじょうさいどの観点から、在家の意義も積極的に認めた。
中国では、仏教の出家主義は儒教じゅきょうの側から<こう>などの社会規範を乱すものとしてしばしば非難を受けた。
また唐代(618-907)以降は、国家経済的見地から出家行為自体を統制し、出家者数を国家的に管理する法制度が整えられた。
日本では、浄土真宗の祖親鸞しんらんが、出家の立場を捨て、僧侶でありながら妻帯さいたい肉食にくじきをする<非僧非俗>の立場を主張、実践したことが知られている。
「出家・在家、通じて戒を受くといへども、しかも僧・不僧の別あり」〔顕戒論中〕「泣く泣く出家すけの心ざし深きよし、ねんごろに語らひ」〔源氏手習〕

細かいところを話すると難しくなりますので、仏教における出家の目的から丁寧に説明していきます。

出家の目的

この世は無常の世界。
どんなにお金や財産、地位、名誉に恵まれても、
それらは続きません。儚く崩れ去ります。
たとえしばらく続いたとしても、
老いて、病にかかり、最後は必ず死んで行かなければなりません。
そんな続かない幸せに執着する、
この世の迷いを離れ、苦しみから離れるために、
人は、出家の生活に入ります。
家を離れるのは、迷いを離れるための1つの手段を表しています。

出家の「家」の意味

出家」の「」とは、煩悩ぼんのうの象徴であり、
五欲の象徴です。

五欲とは、以下の5つです。

五欲
  1. 食欲しょくよく……人間の最も大きな欲。食べるために起こす欲。
  2. 財欲ざいよく……金は一円でも欲しい、土地は一坪でも欲しいと思う心。
  3. 色欲しきよく……男女の仲を満たそうとする性欲。
  4. 名誉欲めいよよく……どんな人からでも誉めてもらいたい心。
  5. 睡眠欲すいみんよく……眠りたい欲。

家にいると、夫も妻も子供もいます。
冷蔵庫を開ければ、食べたいときに食べ、
飲みたいときに飲むことができます。

そんな五欲怒り愚痴煩悩を起こす縁が
たくさんあります。

欲について詳しくはこちらをご覧ください。
欲とは?仏教でいう欲望(五欲)の意味や種類、なくす方法、対処法<

出家の「出」の意味

次に、「出家」の「」とは、
欲などの煩悩を離れて、一切の愛欲を断って、
仏弟子になるということ
です。

そして、出家した仏弟子たちの目的は、
みな共通して、さとりを得るということ
です。

さとりについて詳しくは下記をお読みください。
悟りの意味・52種類の段階と内容、悟った人とは?

共通の目的に向かって集団生活をすることで、
一人ではあきらめてしまったり、途中で心が折れてやめてしまうような
修行でも、みんなで励まし合って実践できるようになります。

出家とは、よりよくさとりを目指すために行うのです。

出家して家族に迷惑はかからないの?

出家するには、結婚して妻や夫があれば離婚して、
子供とも別離しなければなりませんから、
家族には迷惑がかかります。

お釈迦さまは、出家される前は、
一国の皇太子だったので、国を捨て、妻子を捨てて出家されたとき、
国王が国を挙げて捜索活動を展開しました。

その結果、追いかけてきた人たちが、
ついに深い山奥で瞑想しておられるお釈迦さまを発見します。

追いかけてきた人たちについては下記で詳しく書いてありますので併せてお読み下さい。
五比丘(憍陳如きょうちんにょ、アッサジ等)

そして、このように追及します。
「あなたのお父さんお母さんがどんなに心配しておられるか、ご存じですか?
 食べ物も喉を通らず、夜も眠られず心配しておられます。
 なぜ両親を苦しめてまで、修行するのですか。
 国王様は、あなたを次の王様にしようと思って、
 今日まで大事に育ててこられました。
 どうしてその親を苦しめるようなことをされるのですか?
 国民も、次の王様はあなただと期待を寄せています。
 どうして国民を裏切るようなことをされるのですか?
 奥さまも寂しがられて毎晩泣いておられます。
 子供のラーフラ様も
 「お父さんはどこ?お父さんはどこ?
 と探し求めておられます。
 両親を泣かせ、
 妻を泣かせ、
 子供を泣かせ、
 国民を失望させる、
 そんなにまでしてどうして出家なんかされるのですか?
というものです。

すると、お釈迦さまは
それはまことに申し訳ないことです。
 私もよく承知しております

じゃあたくさんの人を苦しめると知りながら
 なぜそんなことをなさるのですか

と言うと、非常に困惑されたのですが、
この世は無常の世界、どんな人もやがて、
 老いて、病にかかって、死んでしまうという問題を抱えている。

 ただこれに気づかない人が、ほとんどです。
 しかしそれに気づいた私は、
 その問題を解決せずに、何ごとも手に着かないのです。

 この大問題のあることを、みなさんにお伝えしたいのだ。
 それにはまず私が解決しなければ、
 皆さんにお伝えすることはできないのだ。
 今は親不孝をしていることになります。
 本当の親孝行をしたいんです。
 本当に妻や子供を幸福にしたいんです。
 国民を本当の幸福にしたいんです。
 今は苦しませるこもしれないけど、
 どうか私の気持ちをくみ取ってもらいたい」
そしてがんとして動かれませんでした。

これをこのようにいわれます。

通さぬは 通すがための 道普請みちぶしん

道普請」とは、道路工事のことです。
危険なところをそのままにしておくと、大変な事故が起きますが、
皆さんに安全に通って頂くために道路工事をして、
一時的に回ってもらっているということです。

そしてお釈迦さまは、6年間の修行の末、
仏のさとりを開かれてブッダとなられ、
すべての人が本当の幸せになれる道を明らかにされました。

そのお釈迦さまの教えによって
今日まで幾億兆の人が本当の幸せになったかしれません。
それが、お釈迦さまの出家だったのです。

では、その後はどのような出家が行われてきたのでしょうか。

出家の方法

仏教で出家するには、まず学校の入学式にあたる、得度式を行います。

「出家」と「得度」の違いですが、どちらも僧侶になるという意味で使われる事が多いでしょう。
厳密にいえば、出家はさとりを求めて煩悩を掻き立てる家庭を離れ、仏弟子になることです。

得度は悟りに至ることをいいますが、今日は「得度式」を意味して、剃髪して坊主頭にし、受戒壇で受戒することをいいます。

僧侶になる方法については、こちらをご覧ください。
僧侶(お坊さん)になるには?各宗派でのなり方・資格と年収とリスク

そして剃髪して坊主頭にし、受戒壇で受戒します。
受戒には、5人や10人の受戒してくれる僧侶が必要です。
戒律は、20才未満の沙弥しゃみは「十戒じっかい」を、
正式な僧侶は「二百五十戒」を守ります。

十戒」は、以下のようなものです。

十戒
  1. 殺生をしない
  2. 他人のものを盗まない
  3. 異性に触れない
  4. ウソをつかない
  5. 酒を飲まない
  6. 午後に食事をしない
  7. 歌や音楽、踊りは試聴しない
  8. 指輪やネックレスなど、装身具、香水は使わない
  9. 大きいベッドを使わない
  10. お金を受け取らない

5番目までは、在家の人も守るべき戒律です。
正式な僧侶は、さらに「二百五十戒」があります。

もちろん会社に勤めていれば、やめなければなりません。
そして、田畑を耕したり、炊事をしたりしてもいけません。
午前中に托鉢たくはつをして、頂いたお布施物を正午までに食べ切って生活し、
仏教の学問や修行に励むのです。

(これが出家の基本ですが、
 各宗派、各寺院によって異なりますので、確認が必要です)

このように、世俗を離れ、遠くさとりを求める
非常に厳しいものが出家です。

では、出家しなければ、この世の苦しみから離れることは
できないのでしょうか?

出家せずに苦しみを離れる方法

お釈迦さまは、中部経典に、
ガンジス河が海に向かって流れ、ついに必ず海に至るように、
在家者も出家者もともに涅槃ねはんに向かい、ついに必ず涅槃に至る

と説かれています。

出家の人も在家の人も、男も女も、すべての人が救われる道を
お釈迦さまは説かれている
のです。

それについては、仏教の真髄なので、
電子書籍とメール講座にまとめておきました。
一度見てみてください。

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この記事を書いた人

長南瑞生

長南瑞生

日本仏教学院 学院長
東京大学教養学部卒業
大学では量子統計力学を学び、卒業後は仏道へ。仏教を学ぶほど、その底知れない深さと、本当の仏教の教えが一般に知られていないことに驚き、何とか一人でも多くの人に本物を知って頂こうと、失敗ばかり10年。インターネットの技術を導入して日本仏教学院を設立。著書2冊。科学的な知見をふまえ、執筆や講演を通して、伝統的な本物の仏教を分かりやすく伝えようと奮戦している。

仏教界では先駆的にインターネットに進出し、通信講座受講者3千人、メルマガ読者5万人。ツイッター(@M_Osanami)、ユーチューブ(長南瑞生公式チャンネル)で情報発信中。メールマガジンはこちらから講読可能

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