呪い・呪術とは

許せない!」「あいつが憎い」「絶対殺す
人生には理由もなく騙されたり、利用されたり、奪われるときがあります。
そんな絶対に許せないことが起きたとき、その呪いの心を方向づけて、
願った通りの結果を引き起こすのが呪術です。
仏教ではどのように教えられているのでしょうか?

呪(のろ)いとは

呪い」には読み方が2つあります。
のろい」と「まじない」です。

のろいとは、恨みや憎しみから、相手の不幸を願うことです。
まじないには、のろいも含めて、さらに病気を治すなど、
災いを除き、願いをかなえるプラスのものも含まれます。

プラスの場合は、どちらかというと祈祷になりますので、
ここではのろいについて解説していきたいと思います。

職場で上司に理由もなくパワハラを受けたとき、
なんであんなヤツが上司なんだ、失脚しろ
何かやりたいことを邪魔されたとき、
あいつさえいなければもっと結果が出るのに
と相手の不幸を願います。

また、彼や夫に不倫をされたとき、
慰謝料を払って欲しい
すべてを失って欲しい
老後に動けなくなったときに復讐してやる
と思います。

また、冗談なようで、
豆腐の角に頭ぶつけて死んじまえ
というのも、呪いです。

このような呪いを実現させるための方法が呪術です。
呪いの心は、人間誰しも持っているので、
似たような呪術が世界中に存在しています。

世界の呪い

メソポタミアの呪い

約5000年前から、メソポタミア地方では、
夜、憎い相手の等身大の人形を作り、
心臓に当たる部分に赤色で×印を書き
針を突き刺します。

そして、呪文を唱えることによって、
呪う相手は心臓病になり、死ぬとされます。

呪文を唱えるときに誰かに見られると、
呪いが自分にかえってきて、自分が心臓病になり、
死ぬ場合があります。

ギリシア・ローマの呪い

この西洋に伝わる呪術はとても簡単です。
憎い相手の目をにらみながら、
サタンの名において相手の不幸を願うだけです。

すでにギリシアの時代からあり、
ローマの法律で禁止されています。
それにもかかわらず、中世以降も、
たくさんの人がこの呪いで死んだといわれています。

フランスの呪い

フランスのブルターニュ地方に伝わる呪いがあります。
まず、土や粘土で壺を作り、
半獣半人の悪魔の絵を描きます。
その中に、相手に起きて欲しい不幸を書いた紙を入れて、
土で栓をします。

満月の夜、誰にも見られないように
木の根元に埋めると、
その夜、悪魔は密かに壺を抜け出して
相手の元へ行き、紙に書いて有る通りのことを
実行するといわれます。

ドイツの呪い

ドイツで発見された呪いもあります。
夕方、時計の針を13時に合わせて動きを止めます。
次の日の朝日が昇る瞬間に、
ある呪文を唱えながら相手を呪います。

その相手は、心臓が止まって死ぬといわれます。

ただしこれは、寝坊したりして翌朝呪いをかけ忘れた場合、
早く時計を動かさないと、呪いが自分に返ってきて、
自分の心臓が止まります。

アメリカ・アパラチアの呪い

アメリカのニューヨーク州からミシシッピ州まで伸びる
アパラチア地方では、ガラスが割れた音を聞くのは、
知人が死んだ知らせだといわれます。

それに基づき、月の見えない深夜、十字路に行き、
青いグラスを落として割り、
誰々が死んだ」とつぶやくと、
その相手はまもなく死ぬといいます。

ペルシャの呪い

これはペルシアのゾロアスター教に由来するといわれる呪いです。
白いロウで相手の像を作り、
相手の髪の毛を3本入れます。

これに憎しみの言葉をまったく同じ文句で
3回唱えて川に流すと
相手は近い内に水難で死ぬといわれます。

マレーシアの呪い

熟していない果物を半分に割り、
相手の髪の毛と、ある果物を入れます。
そして、好きな方法でその果物を腐らせて行くと、
腐りきったときに相手は死ぬといいます。

このような呪いは、日本にもたくさんあります。

日本の呪い

丑の刻参り(うしのこくまいり)

これは日本の呪いで最もポピュラーな神道系の呪いです。

能『鉄輪(かなわ)』に描かれる物語ですが、
夫に愛人ができ、帰ってこなくなりました。
妻は愛人への怨念から貴船神社に参詣すると、神主がこの呪い方を教えてくれます。
妻の呪いの念が燃え上がり、みるみる鬼女となって実行するのです。

まず、藁人形と五寸釘と、鉄槌を用意して、
藁人形に相手の爪や髪の毛を入れます。

次に服装は、白装束で、一枚歯の高下駄を履き、鏡を持ちます。
さらに、火の上にやかんなどを乗せるだ金属製の三本足の台である
五徳」を逆さにして、そこに三本のローソクを立てて
頭にかぶります。これが鉄輪です。

そして、深夜、丑三つ時(うしみつどき)、
午前2時から3時の間に7日間、神社に参ります。

道中、決して人に見られないようにして
神社に参った後、神木に相手の爪や髪の毛を入れた藁人形を
五寸釘で打ち付けます。場所は心臓や目の部分です。
満願の7日目になると、相手は死ぬとされています。

しかしこれも呪った人にも不幸がやってきます。

陰陽師の呪い

奈良時代から江戸時代まで日本でよく行われた
陰陽道には、古代中国の呪いに由来する
蠱毒(こどく)」があります。

毒蛇、むかで、クモ、ガマなど、
多くの毒を持つ生き物を壺に入れて共食いさせます。
最後に残った生き物を「(こ)」といい、 蠱に相手を噛ませたり、
蠱を黒焼きにして粉末にしたものを相手の食べ物に混ぜたり、
相手の床下に埋めたりします。

すると、相手は原因不明の病気になって
急死するといわれます。

これは呪いというより、リアルに毒殺しています。

密教の呪い

密教というのは、真言宗天台宗なのですが、
本来の仏教とは相当外れてしまい、
呪術を行います。
しかも日本でも最も本格的といわれています。

中でも最高の秘法は「摧魔怨敵法(さいまおんてきほう)」です。
転法輪法(てんぽうりんほう)」ともいいます。
必殺の呪術であるため、厳重に伝えられています。

正式には栴檀(せんだん)という木で転法輪筒という
長さ十二指、周囲八指の筒を作ります。
桐や竹、金属で代用されています。

その中に、足下に相手の姓名を書き、頭を不動像に踏ませた
敵の人形を折りたたんで封じ込めます。
それを壇上に安置して、十八道という密教の行法を行い、
本尊に加護を祈ります。
終わると人形を取り出して燃やします。

これは、太平洋戦争のとき、アメリカを倒すために
東京の真言宗で行われましたが、
呪いが返ってきたのか、東京大空襲で焼き尽くされ、
戦争に破れました。

呪いの本質

このように、世界中の多くの呪いに共通するのは、
相手になぞらえた人形などを破壊して、
相手に同じ事を起こそうとするものです。

相手になぞらえるには、人の形にし、
名前を書いたり、相手の髪の毛などを入れます。

そして、釘や針を突き刺したり、
火で燃やしたり、水に流したりすることによって、
相手に不幸が起きて欲しいと願うものです。

科学の発達していない時代の、
因果関係のないことを結びつける単純な願い事です。
いつの時代、どこの国でも、
人間は、憎しみや恨みの心を起こすのです。

そして、もう一つ、呪いの引き起こす重大な影響として、
呪いの代償があります。

呪いの代償

呪いは必ず代償があります。
それを表した
人を呪わば穴二つ
ということわざもあります。

昔、陰陽師は、人を呪い殺すときに、
呪い返し」をされたら自分も死ぬので、
相手の分と自分の分の2つの墓穴を作ってから
呪い始めたことから、
人の不幸を願うと、自分に返ってくるという意味です。

たとえたまたま願いがかなっても、それ相応の代償はあります。
たとえば、大金が欲しいと願ったところ、
家族が死んで、その保険金が入るというようなものです。
世の中にただで願いがかなうような
うまい話はないのです。

ただし、まったく呪いの効果がなく、
自分が不幸になることはあります。

第二次世界大戦で日本でも呪術の効果がなかったように、
ナチスでもルーン魔術を使っていましたが、
その末路は、国を滅ぼす悲惨なものでした。

呪いをかけた人が不幸になる3つの理由

ではなぜ相手の不幸を願うと、
自分が不幸になるのでしょうか?

それには以下の3つの理由があります。
1.見つかると嫌われる
2.自分が消耗する
3.自分の心が自分に不幸を引き寄せる

1.見つかると嫌われる

まず、ほとんどの呪法は、
人に見られると、効果がなくなるとしています。

人を呪っているのを見つかると、
やな奴」ですので嫌われます。
丑の刻参りまでしているのを見つかると、
つまはじきにされる可能性もありますので、
見つかってはならないのは当然のことです。

もし見つかれば、人間関係が悪化し、
自分が不幸になるのです。

2.自分が消耗する

呪術を行うには、お金と時間と体力を消耗します。
たとえば藁人形をつくり、
午前2時に7日間、丑の刻参りをすると
睡眠不足になります。

相手は夜たっぷり熟睡していますので、
これからも憎い相手と何らかの争いをする場合、
自分が不利になります。

感情的になった時には頭が悪くなり、
正常な判断力がにぶってしまっている状態ですが、
そのようなお金と時間と体力を使う余地があるなら、
今後の競争に有益なことに使ったほうが
得策といえるでしょう。

3.自分の心が自分に不幸を引き寄せる

自分の心が、念じた不幸を実現させるからです。

これは「引き寄せの法則」ともいわれています。
世界は自分の心が生みだしているのです。

目標を設定すると、
脳は達成しようとします。
イメージしたものが、
自分に実現してしまうのです。

それで、
なぜやめぬ 怨み呪えば 身の破滅
といわれるのです。

ただでさえ憎らしい相手を憎んでいる間中、
相手に縛られていることになりますから、
憎い相手に時間や精神力を使うのは、
残念なことです。
一刻も早く忘れてしまいましょう。

ではなぜ相手の不幸を願うと、
自分に実現してしまうのでしょうか?

仏教では自分の心が世界を生み出す

仏教では、自分の生きている世界は、
自分の心が生みだしていると教えられています。

私たちが行う心と口と体の行いは、
目には見えない業力(ごうりき)という力になって、
心の奥底の阿頼耶識(あらやしき)という蔵のような心におさまります。

その業力をおさめた阿頼耶識が、
世界を生み出しているのです。

その生み出し方は、
善因善果(ぜんいんぜんか)
悪因悪果(あくいんあっか)
自因自果(じいんじか)
です。

善い行いは、善い運命
悪い行いは、悪い運命を引き起こします。
自分のまいたたねは自分が刈り取らなければならない
ということです。

ところが、人を憎み、恨む心は
仏教では「愚痴」という煩悩の一つですから、
人を呪うのはです。

人を呪うと、目に見えない悪業力が阿頼耶識に蓄えられ、
その阿頼耶識が不幸を生み出すのです。
これを自業自得とも因果応報ともいいます。

呪いを禁じられたブッダ

パーリ経典の律蔵によれば、
ブッダが舎衛国の祇園精舎におられたとき。
出家した女性の僧侶
梵行より去れ、地獄に生ずべし
と呪った人がいました。

梵行とは仏道修行のことですから、
仏道修行より去れ、地獄に堕ちろ
ということです。

それを問題視されたブッダは、
このように禁じておられます。

地獄をもって或いは梵行をもって呪えば破逸提(はいつだい)なり。
中略……畜生界をもって或いは餓鬼をもって
或いは人間の不幸をもって呪えば突吉羅(ときら)なり」

破逸提」「突吉羅」は懺悔しないといけない罪です。
ブッダは、呪いを戒律で禁じられたのです。

漢訳経典の『十誦律』では、このように説かれます。
もし比丘尼、種々の呪術を読誦せば波逸提なり。
 波逸提は焼き、煮、覆障す

呪術は身を焼き、煮るような苦しみを引き起こし、
仏道修行を妨げるということです。

また、戒律以外にも、お経にはこのように教えられています。
呪術や占夢や占相や、また占星を行うべからず
(『スッタ・ニパータ』)

呪術や、その他にも夢占い、手相や家相占い、星占いなどの占いをしてはいけない、
ということです。

そして、呪術も通用しない、
もっと重大な問題があると教えられています。

呪いの効かない人生の重要問題

それは、どんな人の未来にも必ずやってくる
死の問題です。

このように教えられています。

「たとえば大岩が山よりうなりを生じて
周辺に転がり、四方を打ち砕くが如く
このごとく老いと病と死は、刹帝利、バラモン、
吠舎、首陀羅、旃陀羅屠家の生類をば
少しも回避することなく一切を必ず砕破する。
それに対しては象兵も車兵も歩兵も これを用いる余地なく、
また呪術もて戦うとも
或いは財も老死を征服することあたわず」

死に対しては、どんなお金も、軍隊も、呪術によっても
勝つことはできないので、どんなにお金や権力があっても、
人生の最後は死であることをよく知って、
この死の問題を解決して、本当の幸せになりなさい、
ということです。

本当の幸せになる方法

その死の問題を解決して本当の幸せになるためには、
苦しみ悩みの根本原因を知り、
それをなくさなければなりません。

その苦悩の根元については、仏教の真髄ですので、
メール講座と小冊子にまとめておきました。
一度みておいてください。

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