天台宗とは

天台宗といえば、
本山は、京都と滋賀県の間の比叡山延暦寺で、
平安時代には仏教の中心地でした。
その後、僧兵が現れたり、織田信長の焼き討ちにあったり、
歴史でも有名ですが、現在も天台宗の教えに基づいて
修行をする人があります。
天台宗は一体どんな教えなのでしょうか?

天台宗の本山と開祖、御本尊

日本の天台宗を開いたのは、平安時代の最澄という人です。
中国で天台宗を学び、日本に伝えました。
他にも、密教、禅宗や、戒律、浄土教などを伝え、
比叡山を開きましたので、色々な仏教が学べる
総合大学のようなところでした。

ご本尊は、阿弥陀如来や釈迦如来ですが、
在家の家庭では阿弥陀如来の場合が多くあります。

もともとの中国の天台宗の開祖は、中国の智顗(ちぎ)といわれる人です。
中国の天台山にのぼって修行し、教えを確立しましたので、
智顗のことを天台大師といわれ、その教えを天台宗といわれます。

では、天台宗はどんなことを教える宗派なのでしょうか?

私たちはなぜ苦しむのか

天台宗では、私たちの苦しむ原因として、
3種類の煩悩を教えています。
これを「三惑(さんわく)」といいます。
」とは煩悩のことです。

この煩悩を断ち、さとりを開くことを
断惑証理(だんわくしょうり)」といいます。

では3つの煩悩とは何かというと、
三惑の1つ目が「見思(けんじ)」で、
普通の108の煩悩にあたるものです。

2つ目が、「塵沙(じんじゃ)」で、
世の中の知識がないために、相手と話が合わせられず、
導くことができないことです。

3つ目が、「無明(むみょう)」です。
無明とは中道の真理に無知なことで、
ここでは煩悩のことです。

この3つの煩悩を断つことによって、
煩悩即菩提生死即涅槃
真実のさとりを開くことができます。

真実の仏のさとりまでのコース

お釈迦さまは、4つの教えによって声聞も、縁覚も、菩薩も、
全員真実の仏のさとりへと導かれています。

1.蔵教

1つ目が、「蔵教(ぞうきょう)」で、
小乗仏教のことです。テーラワーダ仏教も本質的に同じです。
蔵教」は、一番初歩的な教えで、
見思の惑を断ずるために、
分析によって、我は空であることを観じます。

相手の境涯に応じて、
声聞は四諦八正道によって阿羅漢のさとりを目指し、
縁覚は十二因縁によって辟支仏を目指し、
菩薩は六波羅蜜の修行によって仏のさとりを目指します。

ところが「蔵教」でいわれる菩薩は、お釈迦さまただ一人を指しており、
声聞の阿羅漢や、縁覚の辟支仏では、
真実の仏のさとりとは言えません。

2.通教

通教は、声聞、縁覚、菩薩に共通の教え
ということで、大乗仏教の初歩です。
蔵教よりも深い精神集中に入って、
諸法が空であることを体験的に知らされます。

やっていることは、蔵教と同じ、
四諦八正道、十二因縁、六波羅蜜ですが、
今度はもっと高い段階に導くために、
声聞も縁覚も菩薩も、共通してこの3つを行います。
ここでいわれる菩薩は、お釈迦さまだけではなく、
仏のさとりを求める人全員です。

この教えにしたがって進んでいくと、
普通の人は、見思の惑を断ずるだけですので、
仏といっても声聞の阿羅漢のさとりと同じですが、
すぐれた人は、もっと高い境地があることが分かりますから、
さとりの何段目になるかは人によりますが、
途中で進路変更して、次の別教に入ったり、
さらにその次の円教に入ったりします。

3.別教

別教は、大乗仏教に特有の特別な教えで、
菩薩が対象の教えです。
別教が説かれる代表的なお経は、
華厳経』です。

六道輪廻をしているときは、自分の意志と関係なく、
迷いの世界を永遠に生まれ変わり続けてしまうのですが、
悟りを開き、六道を離れた場合でも、
苦しむ人を救うために、自分の意志で生まれ変わることが
できるようになります。

その六道を離れた世界を4つに分けて、
六道と合わせて全部で十界といいます。
地獄界餓鬼界畜生界修羅界、人間界、天上界
声聞界、縁覚界、菩薩界、仏界の10の世界です。

この生死からも出離するために、
見思」だけでなく「塵沙」、「無明」の惑も
断じなければなりません。

そのため、「空観」によって見思の煩悩を断ち、
真仮観」によって塵沙を断ち、
中観」によって無明を断ちます。

そのときには、さとりの52位
10段までは、見思の煩悩をおさえ、
17段までに見思の煩悩を断ち、
20段までに六道の塵沙を断ち、
30段までに十界の塵沙を断ち、
40段までに無明をおさえ、
52段の仏のさとりまでに一切の無明を断つというように、
順序正しく1段1段進んでいきます。

すると、無明がそのまま法性であったと知らされ、
生死即涅槃、煩悩即菩提のさとりが開けます。

しかしこれには大変な時間がかかります。

4.円教

円教とは、お釈迦さまが説かれた自力の仏教の中で、
もっとも深い教えで、『法華経』の教えのことです。
ですから『法華経』を「自力の出世本懐経」ともいわれます。

円教の「」とは、人間の想像することができない、
すべての徳がおさまった欠け目がない境地で、
教えの通りに実行できれば、
一瞬でさとりが開けることをいいます。

別教では、順番に行った
空観」「真仮観」「中観」を3つに分けるのではなく、
真理は1つなので、それを三方向から見たものとして、
円教では同時に行います。
これを「一心三観」といいます。

それによって体得する境地を「諸法実相」といい、
目の前の現象そのままが真理の現れということです。
一つ一つの現象の中に、すべての真理がおさまっていますから、
一即一切」ともいいます。

これを説明したのが、「一念三千」です。
三千」とは、ありとあらゆる現象のことで、
地獄餓鬼畜生修羅、人間、天上
声聞、縁覚、菩薩、仏の十界の一つ一つに、
また十界を備えて百になります。

そのそれぞれに十如是(にょぜ)
といわれる10の真理を備えて千になります。

さらに、五陰世間、国土世間、衆生世間の三種世間を配して
三千世間になり、これでありとあらゆる現象がおさまります。

そのすべてが、どの一つの現象にもおさまっているのですが、
一番手近な、自分の一瞬の心に三千がおさまっていると観察し、
それを体得することを「一念三千」といいます。

天台宗の修行方法

四種三昧

天台大師智顗の『摩訶止観』に教えられる、
この最高の境地に至るための修行方法が、
円頓止観」で、その具体的な実践方法が、
四種三昧」です。

四種三昧」とは、
1.「常坐三昧
2.「常行三昧
3.「半行半坐三昧
4.「非行非坐三昧
の4つです。

1.「常坐三昧」は、90日間一心に真理を観じ、座禅をすることで、
立ったり歩いたり横たわったりしてはいけません。

2.「常行三昧」は、90日間、阿弥陀仏の周りを歩きながら、
阿弥陀仏を念じ、名号を称え続けます。
止まったり座ったり横たわってはなりません。

3.「半行半坐三昧」は、一定の言葉を称えながら仏の周りを回る方等三昧と、
懺悔を強調する法華三昧があります。

4.「非行非坐三昧」は、上記の3つ以外のすべての三昧のことで、
よほどの人でないとできません。
いずれも大変な難行です。

千日回峰行

平安時代の初期に、日本に天台宗を伝えた最澄は、
この「四種三昧」を修行の中心としたのですが、
最澄から100年後くらいに現れた相応という人が、
法華経』に基づいて、「千日回峰行」という荒行を考えました。

これは、深夜2時に出発して一日約30キロの比叡山の山道を、
千日間、白装束で巡る修行です。
途中で、コースに京都市内も入り、最大84キロの日も100日間あります。
7年間かけて行いますが、最も過酷なのは、5年目の堂入りです。
9日間、飲まず食わず寝ず、堂内で、一定の言葉をとなえ続けます。

尚、常に短刀を携帯し、
途中で行が続けられなくなった場合は、
自害しなければなりません。

この修行が始まっていらい千年以上経って、できた人は、50人しかいません。
しかもこれができたからといって、さとりには遠く及びません。

最近やった人によれば、一番きつかったのは、堂入りよりも、
昔はなかった京都の町のアスファルトが膝にくることで、
この修行で何がえられたのかは分からず、
何もえられなかったかもしれないそうです。

できた人はいるの?

摩訶止観』の作者で、天台宗の開祖である天台大師智顗は、
臨終に、弟子の智朗から
師は、いずれの位にいるや」と聞かれて、
我、衆を領せずば必ず六根清浄位に至らん、
されど利他の為に己を損して、ただ五品弟子位あるのみ

と告白しています。

弟子の指導育成のために自分の修行の時間がなくなってしまい、
思うようにさとりが開けなかったということです。

六根清浄位」とは、円教のさとりの位で、
一瞬でさとりを開くので52段よりもっと少ないのですが、
さとりの52位でいえば、十信(52段中10段)のことです。
五品弟子位」は、十信の前段階です。

天台大師の先生である南嶽彗思
六根清浄位のさとりを得たと言っていますが、
どちらもいまだ凡夫ですから、聖者でもありません。
仏のさとりがいかに高遠な境地か分かります。

このように、天台宗は、理論的にはすばらしいのですが、
その実践は、開祖でさえもさとりが得られないほどの難行なのです。

天台大師は最期、
他力の教えが説かれている『観無量寿経』を掲げて、
その内容を讃えて亡くなったといわれますが、
仏教にはさらに、生死即涅槃、煩悩即菩提の境地を、
どんな人でもえさせる、
お釈迦さまの「他力の出世本懐」の教えが存在しています。

その、すべての人が煩悩即菩提の境地になれる仏教の真髄については、
以下のメール講座と小冊子にまとめておきました。
まずは読んでみてください。

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