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無間地獄(阿鼻地獄)とは

無間地獄むけんじごくは、阿鼻地獄あびじごくともいいます。
阿鼻は、阿鼻叫喚の阿鼻です。

無間地獄は、地獄の中でも最も苦しい世界です。
一体どんな世界なのでしょうか?

無間地獄・阿鼻地獄の意味

無間地獄・阿鼻地獄の意味を辞書で確認してみましょう。

無間地獄
むけんじごく[s:Avīci]
<無間>はサンスクリットの漢訳語で、音写は<阿鼻あび>。
阿鼻地獄に同じ。

阿鼻地獄に同じということなので、 阿鼻あびも見てみるとこのようにあります。

阿鼻
あび
サンスクリット語avīciの音写。
阿鼻旨あびし>などとも音写し、また<無間むけん>と漢訳する。
<阿鼻地獄>のこと。
<無間地獄>に同じ。
八大地獄(八熱地獄)のなかの最下に置かれ、父母・阿羅漢あらかんを殺害するなどの五逆罪や、仏の教えを非難する謗法ほうぼうなどの重罪を犯したものが堕ちるとされる。
罪人は犯した罪の報いとして、この獄中で猛火に身を焼かれ、極限の苦しみを味わうという。

無間地獄(阿鼻地獄)については、もっと詳しく教えられていますので、
以下で説明していきたいと思います。

無間地獄の名前の由来・無間とは

無間地獄」は他にも、無間の獄、無間獄、無間奈落、無間大城などと言われます。
これらの「無間」とは、
インドの言葉の「阿鼻」を中国語にしたものです。
意味は、「間が無い」と書くように、
休む間もなく、苦しみ続けるということです。

このことを、天親菩薩の『倶舎論くしゃろん』にはこのように解説されています。

阿鼻旨あびしの中には楽の苦にまじわ ること無きが故に無間と名づく。
(漢文:阿鼻旨中無楽間苦 故名無間)

阿鼻旨」とは、「阿鼻」といっても同じです。
阿鼻」とは、間がない、という意味です。
それで中国語では「無間」と訳されている、ということです。

普通、学校の勉強でも
会社で仕事をするにしても、
昼休みのような休憩があります。

ところが、無間地獄には、昼休みはおろか、
どんな小さな休憩もありません。
たて続けに苦しみを受け続けます。

それは、他の7つの地獄との大きな違いなので、「無間地獄」と名づけられています。
倶舎論くしゃろん』にはこのように教えられています。

その中に於いて苦を受けることひまなく、余の七大㮈落迦ならかの苦を受くることつね に非ざるごとくに非ざるをもっての故に、無間と名づく。
(漢文:於其中受苦無間 非如餘七大㮈落迦受苦非恒 故名無間)

㮈落迦」とは奈落のことで、地獄のことです。
余の七大㮈落迦ならかの苦を受くることつねに非ざる
というのは、他の七大地獄の苦しみは、常に続くわけではありません。
例えば等活地獄とうかつじごくであれば、体が切り裂かれますが、その後には涼しい風が吹いて生き返ります。
その時は苦しみが途切れますので、少し休憩です。
それに対して、無間地獄の苦しみは途切れることがないので、「無間地獄」と名づけられている、ということです。

他の地獄については、以下の記事で詳しく解説してありますので、あわせてご覧ください。
地獄の種類と階層(八大地獄)と苦しみ・人は死んだらどうなるか?

ではその苦しみの途切れることのない、無間地獄とは一体どんな世界なのでしょうか?

無間地獄の様子

源信僧都げんしんそうずの『往生要集おうじょうようしゅう』には、
無間地獄の様子をこのように描かれています。

無間地獄へ堕ちるまで

まず、無間地獄に堕ちる無間業むけんごうという罪を犯した人は、
死ぬと二千年の間、たった一人で泣きながら
真っ逆さまに堕ちていきます。
これを「頭下足上ずげそくじょう」といいます。

その間、泣きながら
火しかないよー、熱いよ−、隙間もないよー
地獄は悪人ばかりいるのに、
誰も一緒に来てくれないよー、孤独だよー
真っ暗だよー、火の中に堕ちていくよー

と泣き叫ぶと、閻魔大王の部下のが、怒り狂って
そなたは自ら無間業を造ったのであろう。
なぜ今さら後悔するのだ。誰一人助けてくれる者はない。
この苦しみをひとすくいの水だとすれば、
無間地獄の苦しみは、大海のような苦しみだ

と叱責します。

すると確かに下の方から聞こえてくる罪人たちの
阿鼻叫喚の悲鳴を聞くと、
苦しみが10倍になって悶絶し、堕ちていきます。

無間地獄の情景

無間地獄にたどり着くと、
高さ8万由旬・8億キロメートルの七重の鉄の城に行きます。
これが「無間の火城」です。
周りは、7重に鉄条網で取り囲まれ、その周りに刀の林があり、
四隅には、体長40由旬・400キロメートルの銅の番犬がいます。
牙は剣、歯は刀の山、舌は鉄のムチ、すべての毛孔から猛火と臭い煙を噴き出して、
稲妻のような眼光で見張っていますので、脱出は不可能です。

獄卒は、18人のがいて
64の眼を持ち、かぎのように曲がったむき出しの牙が上に向かって
火が流れ出し、無間の火城に満ちています。
頭の上に牛の頭が8つあり、それぞれ18本の角があり、
一本一本の角から猛火を噴き出しています。

城の中には鉄のはたほこというものがあり、
矛から旗が垂れていて、炎がほとばしり、
城の中に満ちあふれています。

四方の門の敷居の上には80の釜があり、
沸騰した銅が流れ出して城内を満たしています。
ちなみに銅が溶けているということは、
1083度以上の赤くトロトロにとけた銅です。

室内には、8万4千の鉄の蜂と大蛇が毒と火を吐いています。
百千の雷のように咆哮し、鉄の雨を降らせています。
また、五百億の虫がくちばしから火を吐きながら
落ちてきます。

無間地獄で受ける苦しみ

無間地獄の猛り狂った燃え下がる炎が、
罪人の皮に穴をあけ、肉に入り、
骨の随まで焼き尽くします。

東西南北の四方から、
間断なく炎が放射されてくるので、
間断なく焼かれ、苦しまなければなりません。
苦しみに責められた悲鳴が聞こえてくるので、
他にも罪人がいるらしいことだけがわかります。

口を熱鉄の金具で開かれ、
舌を抜き出され、牛皮のじゅうたんのように広げられ、
100の鉄釘でとめられます。
口の中に熱鉄の砲丸を入れられ、
溶けた銅を注ぎ込まれます。

無間地獄の苦しみの程度

無間地獄の苦しみの大きさは、
他の地獄のすべての苦しみの合計の
1000倍以上の苦しみです。

そのため、無間地獄に堕ちた罪人が、
無間地獄の次に苦しみの激しい大焦熱地獄を見ると、
天上界のように見えます。

もし無間地獄の苦しみを説こうとしても、
1000分の1も説くことができません。
譬喩でたとえることさえもできません。
そのことは『往生要集』にこのように教えられています。

阿鼻大地獄の處は、千分の中に於て、一分をも説かず。
何を以ての故に。
説き盡すべからず、聽くことを得べからず、譬喩すべからざればなり。
もし人有りて既に説き、人有りて聴かば、かくの如き人は、血を吐きて死せん。

(漢文:阿鼻大地獄處 於千分中不説一分 何以故 不可説盡 不可得聽 不可譬喩 若有人説有人聽 如是之人吐血而死)

もし無間地獄の苦しみを話す人と聞く人がいれば、
どちらも血を吐いて死んでしまうのです。

無間地獄の刑期

無間地獄の刑期は、
観仏三昧経かんぶつざんまいきょう』には、無間地獄についてこう説かれています。

これらの罪人は、この地獄に堕し、八万四千大劫はちまんしせんだいこう経歴きょうりゃくする。
(漢文:此等罪人墮此地獄 經歴八萬四千大劫)

1劫は気の遠くなるほど長い期間で、
4億3200万年ともいわれます。

1劫を4億3200万年として、
八万劫の苦しみを受けるとすれば、
人生80年と無間地獄の期間を比べるとどうなるでしょうか?

長さにたとえて、
人生を1ミリだとすれば、
無間地獄は地球10周半になります。
ほとんど永遠に想像を絶する苦しみを
受け続けなければならないのです。

では、どんな人が無間地獄に堕ちるのでしょうか?

無間地獄に堕ちる罪

どんな人が無間地獄に堕ちるのかというと、
五逆罪ごぎゃくざいを造った人と、
法謗罪ほうぼうざいを造った人です。

観仏三昧経かんぶつざんまいきょう』にはこのように説かれています。

方等経ほうどうきょうそしり、五逆罪をそなえ
(中略)
衆罪をそなうる者、身は阿鼻獄に満ちる。

方等経を謗り」というのは
大乗仏教を謗る法謗罪です。
謗法罪を造り、五逆罪を造った人は、阿鼻地獄に堕ちると説かれています。

涅槃経ねはんぎょう』には、このようにあります。

もし父母、仏および弟子において不善の心を生じ、悪業をおこさん。
かくの如きの果報、阿鼻獄にあり。

(漢文:若於父母佛及弟子生不善心起於惡業 如是果報在阿鼻獄)

父母に不善の心を起こして造る悪業が五逆罪、
仏および弟子に不善の心を起こして造る悪業が法謗罪です。
五逆罪と謗法罪を造った結果、その報いは阿鼻地獄に堕ちると教えられています。

十往生経』には、こう説かれていると『安楽集』に教えられています。

この経を読誦する者あるを見るに或いは相瞋恚しんいし、
心に誹謗ひぼうを懐き
(中略)
地獄に堕ち、八万劫中大苦悩はちまんこうちゅうだいくのうを受く。

(漢文:讀誦是經者或相瞋恚心懷誹謗(中略)墮於地獄八萬劫中受大苦惱)

お経を読んでいる人を見て怒りの心を起こし、けなしたり謗ったりする心を起こすと地獄に堕ちて、八万劫という長い間、大苦悩を受けると説かれています。
1劫は4億3200万年といわれるので、その8万倍という気の遠くなるような長さです。

また諸仏を諂い、謗る人は必ず無間地獄へ堕ちるとも教えられています。

諸仏をへつらい毀謗し、必ず無間の獄に堕す。
(漢文:諂毀謗諸佛 必墮無間獄)

仏さまをバカにするような人は、必堕無間なのです。

このように、五逆罪と法謗罪は、
無間地獄に堕ちる恐ろしい罪なので、
無間業むけんごう」といわれます。

では、五逆罪と法謗罪とは、
それぞれどんな罪でしょうか?

五逆罪ごぎゃくざいとは

五逆罪というのは親殺しをはじめとする、
5つの逆恩の罪です。

これは、手にかけて親を殺すのは
もちろん五逆罪ですが、
心を最も重く見る仏教では、
親を恨んだり、
邪魔だなー」とか
うるさいなー」などと
心で思っただけでアウトです。

また、
こんなに苦しいのなら死んだほうがましだ」と思うのは、
親が産みさえしなければこんなに苦しまなくてもよかったのに、
と親を恨んでいるのですから、五逆罪です。

このようなことを思ったことがあれば、
無間地獄に堕ちます。

法謗罪ほうぼうざいとは

法謗罪とは、仏教を謗る罪です。
仏教なんて子供だましだ
聞く必要はない
などと謗るのはもちろんですが、
仏教に説かれていることを
そんなことはおとぎ話のようなものだろう
と疑ったり、軽んじたりするのも、
法謗罪です。

無間地獄へ墜ちないようにするには?

今回は、無間地獄(阿鼻地獄)について解説しました。

無間の意味は、間断なく苦しみを受けるということで、無間地獄に一度堕ちれば、想像できないほど長い間、苦しみ続けます。
無間地獄に堕ちる人は、無間業という無間地獄へ堕ちるような罪を造った人であり、無間業には五逆罪と謗法罪があります。

その無間業を造っているのは、何も特別な人だけではありません。
お釈迦さまは『涅槃経』に、
すべての人の本当の姿を
五逆、謗法の者と教えられました。

では五逆、謗法のすべての人は、この無間の苦しみから逃れられないのでしょうか?

それについてお釈迦さまは、どんな人でも、この果てしない無間の苦しみから逃れる方法を教えられたのです。
それは、輪廻転生の根本原因を絶ちきることによって、苦しみ迷いの生まれ変わり自体をなくしてしまうことです。
それがなくなれば、無間地獄に生まれることもなくなります。
では、輪廻転生の根本原因とは何なのでしょうか。

それは仏教の真髄ですので、
電子書籍とメール講座にまとめておきました。
一度目を通しておいてください。

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この記事を書いた人

長南瑞生

長南瑞生

日本仏教学院 学院長
東京大学教養学部卒業
大学では量子統計力学を学び、卒業後は仏道へ。仏教を学ぶほど、その底知れない深さと、本当の仏教の教えが一般に知られていないことに驚き、何とか一人でも多くの人に本物を知って頂こうと、失敗ばかり10年。インターネットの技術を導入して日本仏教学院を設立。著書2冊。科学的な知見をふまえ、執筆や講演を通して、伝統的な本物の仏教を分かりやすく伝えようと奮戦している。

仏教界では先駆的にインターネットに進出し、通信講座受講者3千人、メルマガ読者5万人。ツイッター(@M_Osanami)、ユーチューブ(長南瑞生公式チャンネル)で情報発信中。メールマガジンはこちらから講読可能

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