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六波羅蜜とは?

六波羅蜜ろくはらみつというと、それにちなんで名づけられた京都の六波羅蜜寺ろくはらみつじが有名です。
その近くの地名は六波羅と言われるようになり、承久の乱の後には、六波羅探題ろくはらたんだいという幕府の出先機関が置かれました。
このように、日本史にも名前が出てくる六波羅蜜というのは一体どんなことなのでしょうか?

六波羅蜜の意味

まず、六波羅蜜というのはどんな意味なのか、参考までに仏教の辞典を見てみましょう。

六波羅蜜
ろくはらみつ
<ろっぱらみつ>とも読む。
大乗仏教において菩薩ぼさつに課せられた6種の実践徳目で、<六度>ともいわれる。
すでにジャータカや仏伝の一部で菩薩の徳目として強調されていたが、般若経はんにゃきょう系の初期の大乗経典がこれを集大成した。
1)布施ふせ波羅蜜(だん波羅蜜):財施、法施(真理を教えること)、無畏むい施(恐怖を除き、安心を与えること)の3種。
2)持戒波羅蜜:戒律を守ること。
3)忍辱にんにく波羅蜜:苦難に堪え忍ぶこと。
4)精進しょうじん波羅蜜:たゆまず仏道を実践すること。
5)禅定ぜんじょう波羅蜜瞑想めいそうにより精神を統一させること。
6)智慧ちえ波羅蜜(般若はんにゃ波羅蜜):真理をみきわめ、悟りを完成させる智慧。
六波羅蜜の中ではこの智慧(般若)波羅蜜が肝要とされ、前の五波羅蜜はこれを得るための準備手段として要請される。
<波羅蜜>とはこれら6種の徳目の完成態をいう。

難しい表現がされていますが、一言でいうと、六波羅蜜とは、6つの善のことです。
これは一体どういうことなのでしょうか。
もう少し分かりやすく、辞典には書いていないところまで深く解説していきます。

六波羅蜜とは?

では、六波羅蜜とはどんなものなのでしょうか。
六波羅蜜は、六度とか六度万行ともいわれます。
お経には例えばこのように説かれています。

六波羅蜜、布施、持戒、忍辱、精進、禪定、智慧を修習す。
(漢文:修習六波羅蜜布施持戒忍辱精進禪定智慧)

このように六波羅蜜は、以下の6つの善行(善い行い、善い種まき)をいいます。

六波羅蜜(六度万行)
  • 布施ふせ……親切
  • 持戒じかい……言行一致
  • 忍辱にんにく……忍耐
  • 精進しょうじん……努力
  • 禅定ぜんじょう……反省
  • 智慧ちえ……修養

お釈迦さまは、
仏弟子は、布施の行に徹して、欲から離れるように努めよ。
仏弟子は、持戒して、脱線してはならない。
仏弟子は、忍辱の鎧を着て、怒りを抑制するように努めよ。
仏弟子は、精進にして、懈怠であってはならない。
仏弟子は、禅定にして、心を散乱しないようにせよ。
仏弟子は、智慧を磨いて、愚痴であってはならない。
と教えられているのです。

ちなみに、反対もあげて、表にまとめると、以下のようになります。
それぞれの詳しい意味は、表の中のリンクをクリックしてご覧ください。

No 六波羅蜜(六度万行) 意味 反対 意味
1 布施ふせ 親切 慳貪けんどん けち
2 持戒じかい 言行一致 破戒はかい 約束を破る
3 忍辱にんにく 忍耐 瞋恚しんに 短気
4 精進しょうじん 努力 懈怠けたい なまくら
5 禅定ぜんじょう 反省 散乱さんらん 落ち着きがない
6 智慧ちえ 修養 愚痴ぐち ねたみ・そねみ・うらみ

では、この六波羅蜜の反対ばかりやっている人はどんな人でしょうか。
ケチで、いい加減で約束を破り、短気でヒステリック、怠け者で、飽きっぽく、嫉妬深くて人を恨んでいる人です。
そんな人は、みんなから嫌われます。
逆に、この六波羅蜜を実践している人、
因果の道理を信じて、親切で、約束を守り、忍耐強く、努力家で、失敗しても自分を反省する人は、
光る人であり、人気者になるということです。

ただし、不幸になる行いのほうがやりやすく、幸せになる行いはやりにくくなっています。
そのことを『ダンマパダ』にはこのように説かれています。

善からぬこと、己れのためにならぬことは、なし易い。
ためになること、善いことは、実に極めてなし難い。

これは例えば子供の頃、テレビを見たり、マンガを読んだりするのはやりやすいのですが、娯楽なので後に何ものこりません。一時的に楽しいだけです。
一方、勉強は大変なのでやりたくないのですが、後でいいことがあります。
また、お菓子や、アイス、ファストフードのような美味しいものは食べたくなるのですが、栄養が乏しく、無農薬野菜を買ってきて自炊するのは大変なのですが、栄養があって健康にいいようなものです。
そのように、六波羅蜜の反対のような悪いことには流されやすく、六波羅蜜のような善いことはなかなかできないので、強い決意をもって心がけるのが大切です。

仏教の根幹と六波羅蜜

仏教の根幹は、因果いんがの道理です。

お釈迦さまの一生涯説かれた教えは、
因果の道理から外れたものはありません。
必ず因果の道理に立脚しています。

根幹が分からないのに、枝葉が分かるということはありませんから、
因果の道理が分からなければ、仏教は一切分かりません。

では、因果の道理とはどんなことかというと、
すべての結果には必ず原因がある
ということです。
これには万に一つ、億に一つも例外はありません。
まかぬ種は生えませんが、まいた種は必ず生える、ということです。

仏教の目的は、自然現象の解明ではなく、苦しみを解決して幸せになることですので、お釈迦さまが特に教えられているのは、私たちの運命についての因果の道理です。
言葉をかえれば、運命の法則です。
私たちの運命はどのように決まるのかを明らかにされたのがお釈迦さまです。
それはどんな法則かというと、以下のシンプルな法則です。

善因善果ぜんいんぜんか
悪因悪果あくいんあっか
自因自果じいんじか

善いたねをまけば、幸せ運命が現れる。
悪いたねをまけば、不幸や災難が引きおこされる。
自分のまいたたねは、自分が刈り取らなければならない。
ということです。

この因果の道理の結論は、廃悪修善はいあくしゅぜんです。
廃悪修善」とは、をやめて、善いことをしよう、ということです。
因果の道理の結論が廃悪修善になることを、お釈迦さまは『涅槃経ねはんぎょう』にはこう説かれています。

善因より善果を生ずと知り、
悪因より悪果を生ずと知り、
果報を観じおわりて悪因を遠離す。

善因善果、悪因悪果ということが知らされれば、その結果を反省して、悪いことをやめて、善いことをしようと思わずにおれないのです。
お釈迦さまの説かれた仏教の根幹は、因果の道理ですから、
仏教は、「廃悪修善」の漢字4字におさまります。

それで、お釈迦さまは、お経の至るところに悪いことをやめて、善いことをしなさい、と勧められています。
例えば『ダンマパダ』にはこう説かれています。

善い行ないのことわりを実行せよ。
悪い行ないのことわりを実行するな。
ことわりに従って行なう人は、この世でも、あの世でも、安楽に臥す。

ですから、お釈迦さまは、
こんなことがですから、こんなことをやりなさい
と、一生涯にたくさんのを説かれました。
それが、七千余巻のたくさんのお経になったのです。

ですから、お釈迦さまの説かれた一切経には、
たくさんのが説かれています。

六波羅蜜で6つの善を教えられた理由

ところが、あまりにたくさんのがあると、
私たちは学ぶ気が起きなかったり、
学ぶ気になっても、学ぶのに時間がかかりすぎて、終わってしまったり、
学んでも、比較検討したり、目移りしているうちに、
結局何もしなくなってしまいます。

ちょうど、服を買いに洋服屋さんに行ったとき、
店に入るなり、広大な売り場に5万着くらい服がずらーっと並んでいると、
その時点でめんどうになってギブアップしたり、
やる気があっても、自分のサイズに合う服がどこにあるか分からなかったり、
何とかたどりついて選び初めても、
もっといいのが他にあるのではないかと探し続けたりして、
結局買わずに閉店時間になってしまいます。

何もせずに人生が終わってしまうのです。

そこで賢い店員さんが、
自分に合う服を3着くらい見繕って持ってきてくれたら、
その中から「じゃあこれにしよう」と買うことができます。

ちょうどそのように、お釈迦さまは、
ありとあらゆるを6つにまとめて、
六波羅蜜ろくはらみつを教えられました。

苦しみ悩みの人生を渡すには、6つの道がある、
ということです。

京セラやKDDIを創業したり、日本航空をV字回復させた経営者の稲盛和夫氏も、
若手経営者に六波羅蜜を教えて、それが自分の経営哲学と同じだと言います。

お釈迦さまの説かれた『六波羅蜜』という修行の方法についてもみなさんに説きました。
それはまさに、私がいつも話をしてきた、こういう経営哲学をもたなければなりませんということと同じなのです。

(引用:稲盛和夫『どう生きるか なぜ生きるか』)

そして経営者ではない人に対しても、このように大変オススメです。

(六波羅蜜は)普通の人間が生きるための知恵として、
ぜひ取り入れるべきだと私は信じます。

(引用:稲盛和夫『稲盛和夫の哲学』)

六波羅蜜の特徴

しかもこの六波羅蜜のすごいところは、どれでも自分にあったものを1つ、
一生懸命やれば、6つ全部やったことになります。
一気に全部やろうとすると大変ですので、
自分にあうものからやってみましょう。
特に、六波羅蜜の最初にあげられる「布施」は
最も功徳が大きいですのでオススメです。

因果の道理が分かれば分かるほど、
仏教を深く信じれば信じるほど、
廃悪修善の心が強くなってきます。

そして、一番大事なのは実行です。
実行しなければ結果は現れませんから、
今日からやってみましょう。

六波羅蜜を説かれた目的

では、お釈迦さまは、何のために因果の道理を教えられ、六波羅蜜を勧められたのかというと、本当の幸せへ導くためです。
仏教で、本当の幸せとはどんなことなのか、どうすれば本当の幸せになれるのかについては、電子書籍とメール講座にまとめました。
ぜひ見ておいてください。

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この記事を書いた人

長南瑞生

長南瑞生

日本仏教学院 学院長
東京大学教養学部卒業
大学では量子統計力学を学び、卒業後は仏道へ。仏教を学ぶほど、その底知れない深さと、本当の仏教の教えが一般に知られていないことに驚き、何とか1人でも多くの人に本物を知って頂こうと、失敗ばかり10年。たまたまインターネットの技術を導入して爆発的に伝えられるようになり、日本仏教学院を設立。科学的な知見をふまえ、執筆や講演を通して、伝統的な本物の仏教を分かりやすく伝えようと今も奮戦している。

仏教界では先駆的にインターネットに進出し、通信講座受講者4千人、メルマガ読者5万人。X(ツイッター)(@M_Osanami)、ユーチューブ(長南瑞生公式チャンネル)で情報発信中。メールマガジンはこちらから講読可能

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