薬師如来とは?

薬師如来やくしにょらいは、日本ではたくさんのお寺に薬師如来像がありますが、
お釈迦さまの一切経七千余巻の中では、
ごくわずかしか説かれていない謎めいた仏です。
一体どんな仏なのでしょうか?

薬師如来とは

薬師如来とはどんな仏なのでしょうか?
まず仏教の辞典を確認してみましょう。

薬師如来
やくしにょらい[s:Bhaisajyaguruvaiduryaprabha]
具名を<薬師琉璃光るりこう如来>といい、東方の浄瑠璃世界じょうるりせかいの教主。
もと菩薩であったとき12の大願だいがんを発し、衆生しゅじょうの病苦を除き、安楽を与えるなどの現世利益げんぜりやくをもたらすことを誓う。
薬師如来への信仰は、特に重病に陥った者のためにこの如来の像に対して<薬師経>を49遍読誦し、49灯を燃すことなどによりその意識を回復させ、命を継続させることが可能になる、とする続命法に基づいて盛んになった。
日光・月光菩薩を脇侍きょうじとして<薬師三尊>となり、十二神将を眷属けんぞくとする。
薬師経をはじめとする一部の経典に説かれるだけで、その成立の時期や場所は明らかではない。
中国では隋代(581-619)からこの尊に対する信仰が高まったかに考えられるが、遺品としては敦煌莫高窟とんこうばっこうくつを除くと非常に乏しい。
ところが朝鮮半島では比較的遺例が多くなり、わが国では仏教伝来の当初から非常に積極的に造られたようで、古くからの名品が豊富にある。
これは、現世利益的性格の強いこの尊に対する各民族の理解の相違を物語るものである。
経典に明確な像容が説かれないところから、様々な印相いんぞうが行われる結果ともなった。
すなわち、左手与願よがん、右手施無畏せむいという印相は他の尊像にも通ずる通仏相であるが、薬師の古像にこの印が多く、わが国では奈良時代以前の薬師像はほとんどこの形相ぎょうそうである。
この他に、左手に宝珠ほうじゅや薬器を持つ像、あるいは両手に鉢と錫杖しゃくじょうを持つ像などが行われたが、平安時代以降は、左手に薬器(壺)を持つ例が圧倒的に多い。
また七仏薬師もわが国ではよく行われた。
法隆寺金堂像・薬師寺金堂像・室生寺むろうじ金堂本尊像などは与願・施無畏印の例、新薬師寺像・神護寺像・元興寺がんごうじ像・仁和寺にんなじ像などは左手に薬壺を持つ例である。
松虫寺まつむしじ像(平安後期、千葉県印旛郡)、鶏足寺けいそくじ像(鎌倉時代、滋賀県伊香郡)は七仏薬師の作例。

このように、薬師如来について簡単に説明されていますので、ここでは辞典には書かれていないところまで、分かりやすく解説していきます。

薬師如来は「薬師瑠璃光如来やくしるりこうにょらい」ともいわれ、
東方十恒河沙の仏土を過ぎたところにある
浄瑠璃世界じょうるりせかい」の仏です。

薬師如来の
脇士は日光菩薩と月光菩薩、
眷属は十二神将です。

薬師如来について説かれているのは一切経七千余巻の中でも
ほぼ『薬師経やくしきょう』のみと、ごくわずかです。
4〜5種類の異訳がありますが、中でも代表的なのは、
三蔵法師玄奘が翻訳した『薬師瑠璃光如来本願功徳経』です。

薬師如来のご利益

それらの『薬師経』には、
薬師如来が12の本願をおこして仏のさとりを開いたことと、
命を延ばす法、九つの不慮の死を免れること
などをお釈迦さまが説かれています。

薬師如来は、12の本願の
1番目には、人々に仏のさとりを開かせたいと願っています。

6番目には、生まれつきの身体の障害や病気を治したいと願っています。
お経にはこうあります。

諸根不具、醜陋、頑愚、聾盲、跛躄、身攣、背傴、白癩、顛狂、もしまた余の種々の身病ある者、我が名を聞かば皆諸根具足し、身分成満することを得しめん。
(漢文:諸根不具 醜陋 頑愚 聾盲 跛躄 身攣 背傴 白癩 癲狂 若復有餘種種身病 聞我名已一切皆得諸根具足身分成滿)

これは、私が仏になれば、身体のそろっていない人、醜い人、愚かな人、目や耳の悪い人、手や足が悪い人、背中が曲がっている人、皮膚病、精神異常、その他の色々な病に苦しむ人は、私の名前を聞けば、その病苦から救われるようにする、という誓いです。

7番目には、色々な病気を治してやりたいと願っています。
お経にはこう説かれています。

諸患逼切して護なく依なく、住処もあること無く、一切の資生医薬を遠離し、また親屬もなく貧窮にして哀れむべし、この人もし我が名を聞かば衆患悉く除かん。
(漢文:諸患逼切無護無依 無有住處 遠離一切資生醫藥 又無親屬貧窮可愍 此人若得聞我名號 衆患悉除)

これは、私が仏になれば、病気に苦しむ人が頼りも護る人もなく、医師も薬もない人は、私の名を聞けば、色々な苦しみは、すべてなくなるようにする、という誓いです。

このように、病気を治すと願われていたり、
命を延ばす法が説かれたりしていることから、
昔から日本中で多くの信仰を集めてきました。

薬師信仰の歴史

薬師如来の姿は、『薬師経』にはまったく説かれていないので、
奈良時代頃の仏像では手に印を結んでいますが、
平安時代頃になると、ほとんどが薬壺を持っています。

ですから薬壺を持っていれば、おそらく薬師如来だろうと分かりますが、
薬壺を持っていない場合、仏像に添えられた説明を読まずに、
仏像を見ただけで薬師如来を見分けることは、
極めて困難です。

古くは聖徳太子の法隆寺の薬師如来像が
一番古いとされますが、
成立年代ははっきりしていません。

やがて7世紀後半、天武天皇が奥さん(後の持統天皇)の病気が治るように願って、
薬師寺の建立が始まりますが、天武天皇が先に死んでしまい、
工事は奥さんの持統天皇に引き継がれて薬師寺は完成します。

平安時代になると、
天台宗の最澄や、真言宗の空海が、
たくさんの薬師如来像を造り、
全国に広まっていきます。

医学がなかった当時は、病気になったときに薬師如来に
病気を治してください
と祈る人がたくさんありましたが、
最近では医学の発達に伴い、
病院に行く人が圧倒的に多くなり、
薬師如来に祈る人はほとんどなくなりました。

薬師如来が病気を治す目的

ところで、薬師如来は病気を治す仏様だと思われていますが、実はそれは世を忍ぶ仮の姿で、表向きです。
薬師如来が病気を治す目的は、実は別の所にあるのです。

それはなぜかというと、病気が治って命が延びても、
死ななくなったわけではない
からです。
また別の病気にかかります。
普通年を取れば、体が弱ってだんだん病気がちになりますが、病気が治ったり、病気にならなかったとしても、事故や災害、通り魔、老衰など、様々な理由で死にます。

病気が治るというのは、
一時的に死を先送りしただけのその場しのぎで、
根本的な解決にはなっていないのです。

そんなことは、仏のさとりを開かれた
薬師如来が分からないはずがありません。

病気を治し、命を延ばすのは、一秒でも長く生きるためですから、
生きる手段ですが、そうやって命を延ばして生きる目的は、
仏教に説かれています。

薬師如来が病気を治す目的は、
病気が治った人が仏教を聞き、
本当の幸せになるため
です。

仏教には、苦しみ悩みの根元を解決し、
未来永遠の幸せになる方法が説かれているのですが、
仏教は人間に生まれたときしか聞けません。

せっかく生まれがたい人間に生まれても、
病気になったり、死んでしまっては仏教を聞くことができませんので、
仏教を聞くのを助けるために、薬師如来は
病気を治し、命を延ばそうとされているのです。

仏教が大事だから健康が大事
ということです。

薬師如来の真意

では薬師如来は、どのようにすべての人を導こうと
しているのでしょうか?

薬師如来は、大宇宙に数え切れないほどおられる仏方の一仏ですが、
それらの仏の先生は、阿弥陀如来です。

阿弥陀如来と薬師如来の関係は、
阿弥陀如来が先生で、薬師如来はその弟子という
師弟関係にあります。

仏教では、弟子の使命は、先生の御心を伝えることですから、
薬師経』には、薬師如来の東方浄瑠璃世界に往生する方法は、
説かれていません。

私たちから見ると逆方向、西方十万億の仏土を過ぎたところにある
阿弥陀如来の西方極楽世界への往生は説かれています。
極楽への往生を願っているのに、
まだ阿弥陀如来に救われていない人を
薬師如来が助けるとのことです。

薬師如来には、すべての人を根本的に救う力はありませんので、
まずは分かりやすくて多くの人が望んでいる、病気を治したいという私たちの気持ちを理解して信用を深め、最終的には薬師如来が遠く及ばない絶大なお力を持つ
先生の仏である阿弥陀如来に、
苦しみ悩みの根本原因をなくしてもらい、
未来永遠の幸せに救われなさいと勧めておられるのです。
それが薬師如来の真意です。

では、どうすれば未来永遠の幸福になれるのかというと、
苦しみ悩みの根元を断ち切られればいいのですが、
それは仏教の真髄となりますので、電子書籍とメール講座にまとめてあります。
ぜひ一度見てみてください。

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この記事を書いた人

長南瑞生

長南瑞生

仏教が好きで、東大教養学部で量子統計力学を学んだものの卒業後は仏道へ。仏教を学ぶほど、本当の仏教の教えが一般に知られていないことに驚き、何とかみなさんに知って頂こうと失敗ばかり10年。やがてインターネットの技術を導入して日本仏教アソシエーション(株)を設立。著書2冊。科学的な知見をふまえ、執筆や講演を通して、伝統的な本物の仏教を分かりやすく伝えようと奮戦している。

仏教界では先駆的にインターネットに進出し、通信講座受講者3千人、メルマガ読者5万人。ツイッター(@M_Osanami)、ユーチューブ(長南瑞生公式チャンネル)で情報発信中。メールマガジンはこちらから講読可能

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