有頂天(天上界)とは?

有頂天(うちょうてん)」というと、喜びの絶頂や、エクスタシー、
喜びのあまり舞い上がったり、上の空になっていることをいわれます。

もともと仏教で、私たちが生まれ変わり死に変わりする6つの世界でも、
最も楽しみの多い、「天上界(てんじょうかい)」の一つです。

天上界とは神の国・天国

仏教では、私たちは果てしない遠い過去から、
六道(ろくどう)」といわれる苦しみ迷いの6つの世界を
生まれ変わり死に変わり、生死を繰り返していると
教えられています。

その6つの迷いの世界の中でも最高の世界が天上界です。
これを「天界」とも「」ともいいます。

なぜ天というのかというと、『正法念経』には、
もろもろの楽集まるが故に、これを名づけて天となす」(正法念経)
と説かれています。

また、『大般涅槃経』には、
天とは無愁悩と名く、常に快楽を受く」(大般涅槃経)
と説かれています。
天上界は、うれいや悩みのない、常に快楽を受ける世界なのです。

天上界に住んでいるのは、
他の宗教でいわれるですので、
神の国であり、天国が、天上界です。

ここに生まれ変わるにはどうすればいいかというと、『雑阿含経』にはこう説かれています。
十善業跡の因縁の故に、身壊し命終して天上に生ずることを得」(雑阿含経)
10の善い行いである十善を行ずれば、肉体が亡び、命終わって天上界に生まれるということです。

では天上界には、どんな種類があるのでしょうか?

天上界の種類

天親菩薩の『倶舎論(くしゃろん)』によれば、天上界には27種類あります。
その27種類を3つに分類すると、下から順に欲界に6種類、色界に17種類、一番上の無色界に4種類です。

欲界の6種類の天上界とは、
1.四大王衆天(しだいおうしゅてん)(四王天、下天)
2.三十三天(さんじゅうさんてん)(忉利天)
3.夜摩天(やまてん)
4.覩史多天(としたてん)(兜率天)
5.楽変化天(らくへんげてん)
6.他化自在天(たけじざいてん)
の6つです。
これを「六欲天(ろくよくてん)」ともいいます。

次に、色界の17種類の天上界は、大きく分けると、4つになります。
初禅天、第二禅天、第三禅天、第四禅天の4つです。
17種類の天上界を4つに分類すると、
初禅天
1.梵衆天(ぼんしゅてん)
2.梵輔天(ぼんほてん)
3.大梵天(だいぼんてん)
第二禅天
4.少光天(しょうこうてん)
5.無量光天(むりょうこうてん)
6.極光浄天(ごくこうじょうてん)
第三禅天
7.少浄天(しょうじょうてん)
8.無量浄天(むりょうじょうてん)
9.遍浄天(へんじょうてん)
第四禅天
10.無雲天(むうんてん)
11.福生天(ふくしょうてん)
12.広果天(こうかてん)
13.無煩天(むぼんてん)
14.無熱天(むねつてん)
15.善現天(ぜんげんてん)
16.善見天(ぜんけんてん)
17.色究竟天(しきくきょうてん)
となります。
12番目の広果天と13番目の無煩天の間に無想天(むそうてん)を入れて18種類とする場合もあります。

無色界の4種類の天上界は、
1.空無辺処(くうむへんしょ)
2.識無辺処(しきむへんしょ)
3.無所有処(むしょうしょ)
4.非想非非想処(ひそうひひそうしょ)
の4種類です。

織田信長が好きだった敦盛の
人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり
の「下天(げてん)」は、天上界の27種類の中でも一番下の四大王衆天(しだいおうしゅてん)です。
四大王衆というのは、四天王とその部下のことです。
四天王とは、持国天(じこくてん)、増長天(ぞうじょうてん)、広目天(こうもくてん)、多聞天(たもんてん)のことです。
多聞天は別名、毘沙門天(びしゃもんてん)です。
これらの四天王は、仏教を守護する神で、帝釈天(たいしゃくてん)に仕えています。
四天王がいるので四大王衆天のことを「四王天(しおうでん)」ともいわれます。

それ、人間の五十年をかんがえみるに、
四王天といえる天の一日一夜にあいあたれり
」(御文章)
と言われるように、
人間の50年は、四王天でいえば、たった一日だから、
夢幻のような儚いものだ、ということです。

また、3番目の覩史多天(としたてん)というのは、兜率天(とそつてん)ともいわれます。
ここは、お釈迦さまの次に仏のさとりを開く弥勒菩薩修行しているところです。

他にも、織田信長は第六天魔王を自称していましたが、
第六天」は、天上界の下から6番目の他化自在天で、
第六天魔王は、仏道修行を邪魔する魔王です。

色界の3番目の大梵天は、梵天が住んでいるところです。
梵天は、自分が宇宙や人間を創造したと思い込んでいるのですが、お釈迦さまが35歳で仏のさとりを開かれた時、「どうか仏教をお説き下さい」とお願いした神でもあります。

天上界の27種類の中で、下から2番目の「忉利天(とうりてん)」とか
三十三天(さんじゅうさんてん)」といわれる世界は、
仏教を守護し、仏法者の求道心を試すといわれる帝釈天(たいしゃくてん)が統率しているところです。
この世界も、快楽の世界ですが、
ここに生まれると、地獄以上の苦しみもあります。

地獄の16倍苦しむ天上界

例えば「忉利天(とうりてん)」に生まれると、
若いうちは快楽に限りがないのですが、
やはり寿命があり、やがて年老いてきます。

すると、「天人五衰(てんにんごすい)」といわれる
5つの衰えが出てきます。

1つには、頭の上の花飾りがしぼんできます。
2つには、羽衣が、ごみや垢で汚れてきます。
3つには、脇の下に汗をかきます。
4つには、目がしばしばしてきます。
5つには、自宅にいるのが苦痛になります。

このような老境にさしかかると、
あのすばらしい日々は消え去り、美しい音楽も聞こえず、
美味しい料理も、もう食べられません。
今まで親切だった他の天人や天女からも、
見捨てられてしまいます。

ちょうど人間でいえば、
お金があるときは、芸能人のようなセレブな生活をしていたのが、
人気が落ちて、お金がなくなってくると、
プールつきの高級住宅でのセレブな生活もできず、
今まで「先生、先生」とあがめてくれた人たちからも相手にされず、
一人寂しく苦しむようなものです。

天上界は、ものすごく楽しいので、
最後に年をとって楽しみが失われる老いの苦しみは、
地獄の苦しみの16倍と教えられています。
他にも、この苦しみを受ける天上界はたくさんあります。

そして最後は、命が尽きて、死んで行かなければなりません。
これをお釈迦さまは、『過去現在因果経』に、
諸天は楽なりといえども福尽くればすなわち窮まり、六道に輪廻してついに苦聚となる
(過去現在因果経)
と説かれています。
色々な天上界の人々は楽しみが多いと言っても、命が終われば、六道輪廻して苦しむ人々となる、ということです。
天上界といっても、やはり迷いの世界の一つなのです。

有頂天から始まる地獄

迷いの世界といっても、天上界に生まれるには、悪いことをせず、
十善」を行じなければなりません。
さらに高い天上界に生まれるには、
のような禅定の境地に達することが必要です。

中でも、天上界の27種類で、最高の世界である非想非非想処(ひそうひひそうしょ)が
有頂天」です。

ここに行くには、想像を絶する努力が必要です。

ところが、「有頂天から始まる地獄」という言葉があるように、
有頂天から無間地獄に堕ちることがあります。

このことを源信僧都の『往生要集』には
非想も阿鼻をば免れず」(往生要集)
と教えられています。
六道のうちで最高の非想非非想処(有頂天)に生まれても、
六道のうちで最低の阿鼻地獄(無間地獄)を免れるわけではない、ということです。

人間でも、事故を起こすのはルンルン気分のときです。
浮かれている心をおさえることは難しいので、
苦しいときよりも、いい気分に浮かれているときのほうが
危ないといわれます。

頑張ってすごい実績を作ると、
何でもできるかのように自惚れてしまって、
大失敗をしでかすのです。

六道輪廻の中で、天上界でも最高の有頂天に生まれても、
次に地獄のどん底の無間地獄に生まれることがありますから、
苦しみ悩みはなくなりません。

これを『法華経』には
三界は安きことなし、なお火宅のごとし
と説かれています。
火宅」とは、火のついた家のことで、
隣の家が火事で、自分の家のひさしに燃え移ったときのような、
不安で仕方がない状態ということです。

このように仏教では、もまた六道輪廻の迷いの衆生であり、
神の世界である天国も、安らかな世界でもなければ、
目指すべき目的地でもないのです。

仏教では、この果てしない苦しみ迷いを離れて、
未来永遠変わらない幸せになる道が教えられています。

それについて仏教にどう教えられているかについては、
一言では述べられないので、分かりやすいように、
メール講座と、小冊子にまとめておきました。

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