観音菩薩とは?
観音菩薩は、観世音菩薩を略した名前で、
親しんで観音様と呼んでいる人もいます。
『般若心経』では観自在菩薩ともいわれます。
現世利益があって美しいということで、
弥勒菩薩につぐ大人気の菩薩ですが、その正体はどんな菩薩なのでしょうか?
観音菩薩とは?
観音菩薩とは、どんな菩薩なのでしょうか?
まず仏教の辞典を確認してみましょう。
観世音菩薩
かんぜおんぼさつ
慈悲救済を特色とした菩薩の名。
現存のサンスクリット原典に拠れば、サンスクリット語名はAvalokiteśvara(観察することに自在なの意)。
<観音菩薩>とも。【原語と訳語】
鳩摩羅什訳の妙法蓮華経には、<観世音>と共に<観音>という訳語が用いられることから、観音は観世音の略称と考えられる。
また、羅什以前には<闚音><光世音>などと訳され、隋唐時代(581-907)には<観世自在><観自在>などと訳出される。
これらは原語の違いに基づくものと考えられ、上記サンスクリット語名は、avalokita(観)とīśvara(自在)との合成語よりなるが、古くは後半が-svara(音)なる原語のテキストがあったらしい。
中央アジア発見の法華経断片などにはavalokitasvaraと記されているものがあり、これならば<観音>と訳され得る。
また、光世音に関してはavaでなくābhā(光明)と理解して訳出した可能性がある。
なお<世>は原語中のlokitaをloka(世界)に結びつけて翻訳したと考えられるが、詳細は未詳である。
この<観音><観世音>という名称の由来に関して、妙法蓮華経観世音菩薩普門品には、「若し無量百千万億の衆生ありて諸の苦悩を受け、この観世音菩薩を聞きて一心に名を称うれば、観世音菩薩は即時に其音声を観て皆解脱を得しむ」とある。
また観世音菩薩には異名として<救世菩薩><救世浄聖><施無畏者><蓮華手><普門><大悲聖者>などがある。(引用:『岩波仏教辞典』第三版)
このように、観音菩薩について簡単に説明されていますので、
ここでは辞典には書かれていないところまで、分かりやすく解説していきます。
名前の由来・音を観るとは?
「観世音」というのは、鳩摩羅什という三蔵法師が、
インドの言葉から翻訳したものです。
その後、玄奘という三蔵法師が、
こちらが正確だとして「観自在菩薩」と改めたのですが、
『法華経』に、衆生が苦しみ悩む音声を観じて救う
と説かれているので問題はありません。
その上、「観世音菩薩」のほうが言葉としても美しく、
今でも観音菩薩のほうが有名です。
観音菩薩は、仏教を求める人が苦しむとき、
その声を聞いて守ってくださるのです。
どのように守ってくださるのでしょうか?
観音様のご利益
観音様のご利益としては、
『法華経』の中の『観音経』に、説かれています。
『観音経』の全文は『法華経』の「觀世音菩薩普門品第二十五(観音経)」をご覧ください。
➾法華経全文
それは、大きな火に投げ込まれても火が池になって助かるとか
大海を漂流しても波に沈まないとか、
敵に囲まれても助けてくれるとか、
権力者に捕まって処刑されそうになっても刀が折れるとか、
手枷(てかせ・手錠のこと)がはめられてもほどけて自由になるとか、
悪鬼や毒龍に害されないとか、
蛇やさそりは逃げていくとか、
具体的に色々説かれています。
これを天台宗を開いた智顗という人が
まめとめたのが「七難」です。
「七難」とは、以下の7つです。
- 火難
- 水難
- 羅刹難(悪い鬼による苦しみ)
- 刀杖難
- 鬼難(死んだ者の霊による苦しみ)
- 枷鎖難(手錠や鎖でとらわれる難)
- 怨賊難
この七難を免れるということです。
しかも人々を救うために、
様々な姿になって現れると教えられています。
どんな姿でしょうか?
観音菩薩の種類
観音菩薩のさまざまな姿の中でも特に有名な六観音は、
六道の人々を救うと言われ、
六道と以下のように対応しています。
また『法華経』には、六観音どころか、「三十三身」という、
三十三通りの姿になって現れると説かれています。
観音菩薩は、このような多くの姿で現れ、
仏教を求める人に現世利益をもたらすと説かれています。
そのため、観音菩薩がこのような様々な姿で現れるのには目的と理由があるのですが、
それがだんだんずれてきて、
インドでも中国でも日本でも仏教の伝えられた広い範囲で、
仏像(菩薩像)が作られ、信仰されてきました。
日本でも、仏教が伝来して以来、
国を護って欲しいと願って観音像が作られてきましたが、
やがて、個人の欲望を満たして欲しいと願う人が
増えてきました。
しかし、欲望には限りがなく、満たしきって救うことは不可能ですので、
単なる欲望を聞き届けるような現世利益は、
仏教の目的とは異なります。
では、観音菩薩はもともとどんな菩薩なのでしょうか?
観音菩薩の正体
『悲華経』によれば、阿弥陀如来が出家される前、
王様だった頃、たくさんの子供がありました。
その長男が後に出家して観音菩薩となったと説かれています。
阿弥陀如来が出家して仏のさとりを開かれたあと、
次に仏のさとりを開くのが観音菩薩だとも説かれ、
多くの経典に、阿弥陀如来の脇士であると説かれています。
例えば密教のお経である
『観自在大悲成就瑜伽蓮華部念誦法門』には、こう説かれています。
無量寿如来は、諸の相好を具し、光明熾盛なり。
仏の右辺に於いて、観世音自在菩薩あり。
(漢文:無量壽如來 具諸相好光明熾盛 於佛右邊 有觀世音自在菩薩)(引用:『観自在大悲成就瑜伽蓮華部念誦法門』)
「無量寿如来」とは阿弥陀如来のことですから、
その右側の脇士が観音菩薩だということです。
また、阿弥陀如来の分身であるとも説かれていますから、
観音菩薩は、阿弥陀如来の化身なのです。
観音様のご利益を頂く方法
このように、観音菩薩は、阿弥陀如来の慈悲の現れですから
観音菩薩の説く法は、
「すべての人を必ず絶対の幸福に救う」
という阿弥陀仏の本願です。
観音菩薩は、阿弥陀仏の本願を勧め、
阿弥陀仏の本願を求める人を守る菩薩なのです。
ではどうすれば観音菩薩のご利益があるかというと、
阿弥陀仏に救われた人には、
阿弥陀仏は数え切れないほどの観音菩薩をつかわし、
無数の観音菩薩は常にかげのように寄り添って護り続け、
すぐれた友達になってくれると教えられています。
そして、阿弥陀如来に救われて極楽浄土に往生した人は、
苦しみ悩む人々を救うために色々な姿でこの世へかえってくるのですが、
それを、観音菩薩が三十三通りの色々な姿になって現れると説かれているのです。
このように、観音菩薩のご利益があるのは、
阿弥陀如来のお力によって、絶対の幸福に救われた人です。
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この記事を書いた人
長南瑞生
日本仏教学院 学院長
東京大学教養学部卒業
大学では量子統計力学を学び、卒業後は仏道へ。仏教を学ぶほど、その底知れない深さと、本当の仏教の教えが一般に知られていないことに驚き、何とか一人でも多くの人に本物を知って頂こうと、失敗ばかり10年。インターネットの技術を導入して日本仏教学院を設立。著書2冊。科学的な知見をふまえ、執筆や講演を通して、伝統的な本物の仏教を分かりやすく伝えようと奮戦している。
仏教界では先駆的にインターネットに進出し、通信講座受講者3千人、メルマガ読者5万人。ツイッター(@M_Osanami)、ユーチューブ(長南瑞生公式チャンネル)で情報発信中。メールマガジンはこちらから講読可能。
著作
- 生きる意味109:5万部のベストセラー
- 不安が消えるたったひとつの方法(KADOKAWA出版)