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生きる意味を、知ろう。

畜生とは?

よく悔しいときに、「ちくしょう」とか、「こんちくしょう」と言います。
道徳的に悪い行いをする人をののしるときに「犬畜生」と使われ、あまりいい言葉としては使われません。

畜生の語源は、もともと仏教の畜生ちくしょうです。
うっすら動物のことだとは分かると思いますが、それだけではありません。
畜生は一体どんな世界で、どんなことをすると畜生に生まれるのでしょうか?

畜生の意味

畜生の意味について、参考までに辞書を見てみましょう。

畜生
ちくしょう[s:tiryañc, tiryag-yoni]
サンスクリット語は鳥獣虫魚などあらゆる動物を意味する。
傍生ぼうしょう>とも直訳された。
漢語の<畜生>は家畜のことで、『管子』禁蔵、『韓非子』解老などに用例がある。
仏教では前世の悪行の報いで、動物に生まれ変わると考える。
その動物の境涯を<畜生道>といい、六道の一つ。
人間に残害され、互いに殺傷しあう苦を受けるという。

辞書だけではまだ仏教でいわれる畜生・畜生道が分かりにくいため、詳しく説明します。

畜生の種類

畜生とは、仏教で、私たちが生まれ変わりを繰り返す、
六つの迷いの世界、「六道ろくどう」の一つで、
畜生道ちくしょうどう」とも
畜生界ちくしょうかい」ともいわれます。

畜生道は、地獄道、餓鬼道がきどうと合わせて、三悪趣さんあくしゅとか三悪道といわれたり、
餓鬼道と畜生道を合わせて鬼畜きちくといわれます。
(今日使われる鬼畜の意味と異なります。)

畜生のもともとの生活環境は海ですが、
そこから人間界や天上界の間に出てきて一緒に生きています。
畜生の数は『往生要集おうじょうようしゅう』によれば34億種類もありますが、
現時点で人間に発見されているのは100万種程度です。
これは現在、毎年1万種類以上の新種が発見されています。

種類は、鳥や獣、蛇、魚のような動物だけでなく、
虫もいますが、虫は極めて数が多く、半分以上は虫です。
ゲジゲジや、土の中に住む虫に生まれれば、
真っ暗闇の中で生まれ、闇の中で死んでいきます。
ノミやシラミに生まれると、人間の身体で生まれ、
人間の身体で死んでいきます。

畜生に生まれると?

畜生道(畜生界)に生まれるとどんな生きざまになるかというと、
見ての通り、強い生き物が、弱い生き物を食べる
弱肉強食の世界です。
畜生は、獣でも、鳥でも、魚でも、虫でも、
常に自分より弱い、食べ物にする生き物を探し、
自分が餓死する前に、他の生き物を食い殺さなければなりません。

頭はあまり発達していないため、
先のことはあまり考えられませんので、
本能的にのままに生きています。

常に「今さえ楽しければいいや」と考えて、
弱くて美味しそうな生き物をただただ追いかけ回す、
刹那的な、快楽主義生き方をしています。

逆に、常に自分を食べる生き物に狙われているので、
昼も夜も心は安まりません。
夜寝ているときも、少し物音がしただけで、ビクッと聞き耳を立て、
危険を感じたら猛烈に逃げ出さなければなりません。
それでも捕まれば死にます。
常に不安におののく恐怖の競争社会です。

強い動物に生まれても、人間に撃ち殺されたり、
魚に生まれると、人間に釣られたり、網で捕獲されて食われます。

馬や牛、豚などに生まれると、鼻に穴をあけられてつながれたり、
顔や背中に馬具をつけられて重い物を乗せられたり引かされたり、
ムチで打たれて一生涯タダ働きさせられます。

そのあげく、ある日、鉄で脳を打ち割られて屠殺され、
出荷されて食われることもあります。

寿命は種類によって、すぐ終わってしまう場合もあれば、
かげろうのように数時間の場合もあります。
鶴は千年、亀は万年と言われるように、
人間よりも長い畜生もあり、その間、いつも不安に怯え、
獲物を探して競争し続けます。

どんな行いによって畜生道に生まれるの?

どんな行いによって畜生道に生まれるのかというと、
愚痴ぐちの心です。
また、恥知らずな者も畜生に生まれます。

実際、お釈迦様の『涅槃経ねはんぎょう』には、このように説かれています。

ざんは人に恥ず、は天に恥ず、これを慚愧ざんきと名づく、
無慚愧むざんきは名づけて人とせず。名づけて畜生とす。

(漢文:慚者羞人 愧者羞天 是名慚愧 無慚愧者 不名爲人 名爲畜生)

また、八宗の祖師といわれ、あらゆる宗派から尊敬されている龍樹菩薩りゅうじゅぼさつの『大智度論だいちどろん』には、こう説かれています。

恩を知るはこれ大悲の本なり、業を開く初門なり。
恩を知らざる人は畜生よりも甚だし。

(漢文:知恩者是大悲之本 開善業初門 不知恩人甚於畜生)

渋谷駅で10年間、亡くなった飼い主の教授を待ち続けた
忠犬ハチ公」までいかなくても
犬は3日飼えば恩を忘れないと言われるのに、
恩知らずな人は、畜生よりもお粗末だ、ということです。

畜生界の最大の難点

今回の記事では、畜生と畜生道・畜生界について、詳しく解説しました。
仏教でいう畜生とは、苦しみの世界である六道の一つ、畜生道(畜生界)のことです。
畜生界に生まれれば、他の強い生き物に怯え、
死と隣り合わせで、心休まることがない世界です。
この畜生界には、愚痴の心や恥知らずの心で造った罪によって生まれると教えられます。

畜生界で最も恐ろしいところは、
畜生は、仏教を聞けませんので、
六道輪廻ろくどうりんねから抜け出すこともできない
ことです。
仏法を聞いて、六道輪廻の迷いを離れられるのは、
人間に生まれたときだけなのです。
ところが、せっかく人間に生まれても、動物のように、
今さえ楽しければいいや」という刹那的な快楽主義だったり、
恥知らずな生き方だったりして、仏法を聞かなければ、
せっかくのチャンスを失ってしまいます。

生まれがたい人間に生まれた今生に、
人間に生まれた意味をよく見つめ、
迷いの根本原因を知り、それをなくして、
永遠の幸福に生かされましょう。

迷いの根本原因については、分かりやすいように
メール講座と電子書籍にまとめておきました。
一度見てみてください。

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この記事を書いた人

長南瑞生

長南瑞生

日本仏教学院 学院長
東京大学教養学部卒業
大学では量子統計力学を学び、卒業後は仏道へ。仏教を学ぶほど、その底知れない深さと、本当の仏教の教えが一般に知られていないことに驚き、何とか一人でも多くの人に本物を知って頂こうと、失敗ばかり10年。インターネットの技術を導入して日本仏教学院を設立。著書2冊。科学的な知見をふまえ、執筆や講演を通して、伝統的な本物の仏教を分かりやすく伝えようと奮戦している。

仏教界では先駆的にインターネットに進出し、通信講座受講者3千人、メルマガ読者5万人。ツイッター(@M_Osanami)、ユーチューブ(長南瑞生公式チャンネル)で情報発信中。メールマガジンはこちらから講読可能

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