三迦葉(カッサパ3兄弟)とは

三迦葉(カッサパ3兄弟)」は、十大弟子の一人の大迦葉と間違いやすいですが、まったくの別人です。
バラモン教の3人兄弟の修行者で、
長兄がウルヴェーラ・カッサパ(優楼頻螺迦葉・うるびんらかしょう)、
次兄がナディー・カッサパ(那提迦葉・なだいかしょう)、
末弟がガヤー・カッサパ(迦耶迦葉・がやかしょう)といいます。

この3人はバラモン教の修行者でしたが、仏のさとりを開かれたばかりのお釈迦さまの弟子となり、やがて『法華経』や『大無量寿経』の説法も聞いています。
一体どんな人たちだったのでしょうか?

カッサパ三兄弟の勢力

ウルヴェーラ・カッサパは、マガダ国のニレゼン河の近くのウルヴェーラ村に住んでいたので、ウルヴェーラ・カッサパといわれます。お釈迦さまが35才で仏のさとりを開かれた時に、すでに120才の高齢で、500人の弟子がいました。
その少し下流に次兄のナディー・カッサパが住み、300人の弟子がいました。
一番下流の、お釈迦さまが仏のさとりを開かれたガヤーの近くに、ガヤー・カッサパが住んでおり、200人の弟子がいました。

3人とも、バラモン教のヴェーダを読んで、火のに仕え、髪の毛をホラ貝のように結い上げていました。
同じような髪型をした合計1000人の弟子があり、たくさんの信者もいて、マガダ国では知らない人はいないほどの勢力がありました。

お釈迦さまは、もともとニレゼン河のほとりのガヤーで仏のさとりを開かれたのですが、240キロくらい離れた鹿野苑(サールナート)の五比丘に教えを説きに行かれました。
そこでしばらく教えを説かれ何十人かの仏弟子が現れた後、仏のさとりを開かれてから2年目に、三迦葉に教えを説くために、鹿野苑から一人で戻ってこられたのでした。

お釈迦さまと毒蛇の対決

夕方頃、お釈迦さまがウルヴェーラ・カッサパの住まいに近づくと、その弟子たちはすぐに尊いお客様だと直感し、先生に案内します。
ウルヴェーラ・カッサパも、
これはなかなかの修行者が現れた。自分ほどの悟りは開いていないだろう
と思います。お釈迦さまが一夜の宿を所望されると、
実は火の神をまつった部屋があるのですが、そこには毒のある大蛇が住みついています。
私たち兄弟は悟りを開いているから襲われないのだが、そこでよければお貸ししましょう

それは有り難い。ぜひお願いします
ウルヴェーラ・カッサパは内心、せっかくなかなかの修行者だったが、彼の命も今日限りだろうと思いつつ、快く部屋を貸したのでした。

お釈迦さまは、その部屋に入られると、心を一つにして禅定に入られました。
やがて話の通り、夜中に大きなコブラが現れると、部屋に人がいるのを見つけ、怒りの火炎を吹きます。
するとお釈迦さまも、禅定によって火炎で応じられます。
その部屋を外から見ると、建物に猛烈な火柱が立ち、夜の林を照らすのでした。
ウルヴェーラ・カッサパは、
私の言うことを聞かないからこんなことになるのだ
と思いましたが、弟子達は、放っておけないので消火活動にあたります。
ところがお釈迦さまはさらに強い火炎を発せられたので、弟子達は逃げ出してしまいました。

猛火の中でお釈迦さまは、
このままではこの蛇は私の炎で焼け死んでしまうだろう。
そうなっては大変だから、命を失わないように応じて、心を清らかにしてやりたい

と思われて調節されます。

毒蛇は、全力を尽くして火炎を吐き、部屋は火の海になっているにもかかわらず、お釈迦さまは静かで殺意も怒りも感じられないのに驚き、ついに降参したのでした。

翌朝、お釈迦さまが毒蛇を鉢に入れてウルヴェーラ・カッサパを訪れると、
きっと死んだだろう
と思っていたウルヴェーラ・カッサパは、お釈迦さまが生きている上に、毒蛇が縮こまって鉢に入っていることに驚き、
これは相当の修行を積んだに違いない。しかしまだ私ほどの悟りは開いていないだろう
と思いつつ、
尊い方よ、しばらくここに滞在されてはいかがでしょうか
と言います。

お釈迦さまが
あなたが毎日私を訪れるならとどまりましょう
というと、ウルヴェーラ・カッサパは快く承諾したのでした。

お釈迦さまから教えを聞く神々

お釈迦さまは、林に入って行かれましたが、その最初の夜、林が美しい4つの光で真昼のように明るく照らし出されました。
翌朝、約束の通り、ウルヴェーラ・カッサパがお釈迦さまのもとを訪れて、その理由を尋ねると、
天の神々の四天王が教えを聞きに来たのです
といわれます。内心驚きながらも、平静を装って、朝食に招くと、お釈迦さまは
それなら先に行っていてください。すぐ後から行きます
といわれるので、先に戻ると、お釈迦さまはヒマラヤ山の林でとれる木の実を持って、すでに部屋におられます。
その実はどうされたのですか?
美味しそうな実がなっていたので、幾つかもいできました。どうぞ食べてください
ウルヴェーラ・カッサパは、そのすごさに驚きながらも、素直には認められないのでした。

その夜、お釈迦さまの林の上空は、前の晩よりももっと明るく輝きました。
翌朝、ウルヴェーラ・カッサパがやってきて尋ねると、
夕べは、天上界の帝釈天が教えを聞きにやってきたのです
といいます。
ウルヴェーラ・カッサパは、すごい方だが、まだ私には及ばないだろうと思います。
その夜は、林がさらに明るく輝いていたので、翌朝尋ねると、梵天が教えを聞きに来ていたといわれます。
こうしてだんだんウルヴェーラ・カッサパの尊敬の念が強くなっていくのでした。

祭りで心を見抜かれる

それから数日後、このあたりでは年中行事になっている7日間の大きな祭りがありました。
カッサパ三兄弟の教団が中心となって執り行い、たくさんの人々が集まります。

ウルヴェーラ・カッサパは、その前日に、
もしあの若い修行者が、いつものように多くの人々の前で神通力を発揮したら、みんな私を捨てて、あの修行者の弟子になってしまうのではないか
不安に思いました。

ところが、当日になると、お釈迦さまは祭りに現れません。
ウルヴェーラ・カッサパの心を見抜かれ、別のところで一日を過ごされたのでした。

翌朝、ウルヴェーラ・カッサパは、いつものようにお釈迦さまのもとへやってきて
昨日はなぜ来られなかったのですか?心配していたのです
と言うと、
それはあなたのお望みではなかったのですか?あなたの思われた通り、私は一日姿を隠していたのです
すっかり心を見抜かれたウルヴェーラ・カッサパは驚いてその場を立ち去りましたが、
それでも自分のほうが上だろうという自惚れはなくなりませんでした。

お釈迦さまからの導きの数々

これだけ力の差を見せられても、ウルヴェーラ・カッサパは、お釈迦さまよりはるかに高齢で、多くの弟子を持ち、名声もあったため、なかなかプライドを捨てられませんでした。
ただでさえ人間は、年を取れば取るほど考えを変えるのは難しくなるので、それも無理のないことだと思います。
そんなウルヴェーラ・カッサパを何とか導こうと、お釈迦さまは手を尽くされるのでした。

ある時は、ウルヴェーラ・カッサパの500人の弟子たちが、火をつけるために薪を割ろうとしていたのですが、どうしても割れませんでした。弟子たちは
きっとあの修行者の力に違いない
と師匠に訴えていると、お釈迦さまが現れます。
ウルヴェーラ・カッサパよ、薪を割らないといけないのですか?
その通りです
するとお釈迦さまは、その場であっという間に500の薪を割ってしまわれました。
500人の弟子たちは、驚きながらも喜んで火をつけようとすると、今度は火がつきません。
お釈迦さまは、あっという間につけてしまわれます。

やがて火の儀式が終わると、今度は火が消えなくなってしまいました。
お釈迦さまがウルヴェーラ・カッサパに火を消したほうがいいのか確認すると、またもやすぐに500の火を消されたのでした。

こうしてウルヴェーラ・カッサパだけでなく、その弟子たちも、お釈迦さまのすごさに感心していったのでした。

このようにお釈迦さまは、ウルヴェーラ・カッサパを導くために、3カ月にわたって3500の神通力を示されたといわれます。

ウルヴェーラ・カッサパの帰依

やがて雨季がやってくると、熱帯ということもあり、大雨が1週間続きました。
するとニレゼン河の水があふれて、辺り一帯が湖のようになります。
ウルヴェーラ・カッサパは、
あの修行者を放っておくわけにはいかない
とすぐに船を出させてお釈迦さまのおられる林の中に入っていきました。
するとお釈迦さまの周りだけ、水が避けて流れています。
船に乗ることを勧めると、ふわりと船に降りてこられます。
ウルヴェーラ・カッサパは、そのすごさにまたもや感心します。

お釈迦さまは、いよいよ時節到来と思われて
ウルヴェーラ・カッサパよ、あなたは悟りを開いたと思い込んでいるが、未だ悟りを開いていないのだ。
悟りを開く行もいまだに修めていない

といわれます。
この言葉はウルヴェーラ・カッサパの心を貫き、ついにお釈迦さまの言葉を素直に聞き、出家して弟子入りしたいと頭を下げたのでした。

よくぞ言った。だがあなたには500人の弟子がいる。
まず彼らにあなたの考えを話して自由にしてやりなさい

ウルヴェーラ・カッサパはさっそく弟子達を集めて
私はこの偉大な修行者のもとで修行することにした。
今日からお前たちは、自由にするがよい

すると弟子たちは口々に
それなら私もあの方の弟子になります
と言います。

こうして、ウルヴェーラ・カッサパと500人の弟子たちは、ホラ貝のように結った髪の毛をそり落とし、火の神に仕えるための道具はすべて河に流したのでした。
120才の高齢になって、地位も名声もプライドもすべてを捨てて、自分より80才以上若い若者に弟子入りし、ゼロから修行をし直すというのは、やはりウルヴェーラ・カッサパは人並み外れたすぐれた人であったことが分かります。

弟たちの帰依

ところが、ニレゼン河の中流に住んでいたナディー・カッサパのもとへ、上流から兄とその弟子たちの髪の毛や道具が流れてきます。
それを見つけたナディー・カッサパは兄の身を案じ、弟子の一人に様子を見に行くように命じた上で、自ら300人の弟子と共に、兄の元を訪ねました。

そこで全員がお釈迦さまの弟子になったと聞くと、ナディー・カッサパは驚きますが、ウルヴェーラ・カッサパが、
あの方はすばらしい方だ。
あの方について修行することが私には必要だ

と、お釈迦さまの教えを話します。
兄の言葉を聞いているうちに、ナディー・カッサパも、お釈迦さまの弟子になることに決め、髪の毛を切り落とし、道具と共に河に流したのでした。

ところが一番下流に住んでいたガヤー・カッサパも、水に流れてくる兄たちの髪の毛や道具を見て心配になり、弟子たちを引き連れてウルヴェーラを訪ねます。
そこで兄2人がお釈迦さまの弟子になったと聞いて、ガヤー・カッサパも同じくお釈迦さまの弟子になったのでした。

こうして、お釈迦さまは、弟子が急に1000人となったのでした。

お釈迦さまはしばらくウルヴェーラにとどまって教えを説かれましたが、ある時、1000人の弟子を連れてガヤーの山に登られました。
するとお釈迦さまは1000人の弟子たちに対して火にちなんだ説法をされました。
一切のものはみな燃えている。
目に見えるものも、見分ける心も燃えている。
それによって苦しみ楽しみを感じると、それは欲望や怒りや愚痴の炎をあおり、憂い苦しみの火が燃え盛る。
ところが煩悩の火を消すならば、目に見えるものが心を燃やすことはできない。
そうすれば本当の智慧が得られるから、もはや神を拝んだり、儀式をすることは要らないのだ

この説法によって、三迦葉をはじめ、1000人の弟子は悟りを得たといわれます。

マガダ国の人々への戒め

それからお釈迦さまは、三迦葉を従えてマガダ国の首都・王舎城へ向かいました。
マガダ国の王、ビンバシャラ王は、それを聞いて感激し、マガダ国のバラモンやその他の人々をたくさん従えて迎えに出ました。
ところがビンバシャラ王はお釈迦さまが来られた感動に打ち震えていたのですが、その他の人々の中には、
あれは、お釈迦さまがウルヴェーラ・カッサパの弟子になったということか?
する人たちがありました。

それを察知されたお釈迦さまは、ウルヴェーラ・カッサパに、火の神を捨てた理由を述べるよういわれます。
人々は常に欲望を求め、神に犠牲を供えて儀式によってご利益があると信じているが、私はこれは汚れたことだと知らされて儀式をやめた。
輪廻の迷いを離れて涅槃を得ることこそが本当の幸せである

こう言ったウルヴェーラ・カッサパは、お釈迦さまを礼拝したのでした。
これに驚いた人々は、ウルヴェーラ・カッサパが仏弟子にになったことを知り、お釈迦さまの教えを聞くようになったのでした。

この三迦葉の話からも分かるように、自惚れ心というのは大変恐ろしいもので、自分の姿を見えなくしてしまいます。
それでは仏教は聞けないだろうとお釈迦さまは、ウルヴェーラ・カッサパを導かれますが、お釈迦さまでさえも3カ月もかけておられます。
それだけ自惚れ心は根深いのです。

また、最後にマガダ国の人々に対してもお釈迦さまは、心構えを正されるために、ウルヴェーラ・カッサパに神を捨てた理由を話すようにいわれています。
仏教の教えを聞くときは、自惚れていてはとても聞けないことが分かります。

ちなみに仏教では、迷いの根本原因をどのように明らかにされ、どうすれば迷いを離れて本当の幸せになれるのか、ということについては、以下のメール講座にまとめておきました。
今すぐ見ておいてください。

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