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三十二相八十随形好とは?

今回は、仏様のお姿について、詳しく解説します。

仏様には、「三十二相八十随形好さんじゅうにそうはちじゅうずいぎょうこう」、または「三十二相八十種好さんじゅうにそうはちじっしゅごう」と言われる、
32種類のすぐれた特徴があり、さらにその特徴を詳しくした80通りの特徴があります。
有名なものでは、インドの既婚女性は、よく眉間にホクロ的な何かをつけていますが、それと同じように仏様も眉間に何かあります。
あれは白毫相びゃくごうそうといわれるもので、三十二相の一つです。
ちなみにお寺の地図のマークが卍なのも、三十二相から来ています。
また、仏様の耳たぶが長い、いわゆる福耳なのは、八十随形好の一つです。
仏像を見ても、髪型が小さい渦巻きがたくさんある螺髪らほつとか、頭の形が鏡餅のように二段階にもりあがっている肉髻にくけいとか、色々な特徴が現れています。
あなたもぜひ自分に三十二相のうちのどれかが現れていないか確認してみてください。

三十二相の意味

立像

仏陀や転輪王には、凡人にはない、三十二相というすぐれた特徴があるといわれます。
有名なものでは、
・眉間に白い毛がある眉間白毫相みけんびゃくごうそう
・指に水かきがある手足指縵網相しゅそくしまんもうそう
・足が扁平足な足下安平立相そくげあんぴょうりゅうそう
・立った時、手が膝まで届く正立手摩膝相しょうりゅうしゅましっそう
・歯が普通より4多い40本である四十歯斉相しじゅうしさいそう
・舌が広くて長い広長大舌相こうちょうだいぜつそう
・後頭部が盛り上がっている頂上肉髻相ちょうじょうにっけいそうなどがあります。

これらの特徴は、凡人にはありませんが、すぐれた人の中には、たまに幾つか現れている人もあるようです。
例えば、お釈迦さまのいとこの 提婆達多(ダイバダッタ)には、三十二相中、三十相まであったといわれます。
仏様の場合、これらの特徴があるのは、「仏覚」というさとりを開かれるために、過去世から大変な長期間の修行をなされたことによります。
その結果、仏の徳である仏徳をそなえられ、それが姿に現れたものです。
そのため、実は、仏様のお姿を知ることで、仏様のもつ大変深い功徳についても分かります。

」の意味については、こちらの記事をご覧ください。
仏教の「仏」(ほとけ・ぶつ・仏陀)の深い意味を解説

では、32種類の仏様の特徴はそれぞれどんなものなのでしょうか。
そして、どのような由来、つまりどんな種まきによって現れたものなのでしょうか。


1. 足下安平立相

足下安平立相そくげあんぴょうりゅうそうの特徴】
仏陀の足裏は完全に平らで柔らかく、どんな地面にもピッタリと密着する。
凹凸があっても隙間なく密着し、安定感がある。

【特徴の由来】
仏様が修行者であった菩薩時代に、「布施」「持戒」「忍耐」と言われる修行を成就し、深い瞑想状態に入り、大山のごとく揺るぎない精神状態を得られたことによって現れる、素晴らしい身体的特徴です。
そしてこれは、聖人もを犯した者も分け隔てなく、すべての存在を慈しみ救おうとする平等な慈悲の心の現れでもあります。

2. 足下二輪相

足下二輪相そくげにりんそうの特徴】
仏陀の足の裏には、特別な模様が鮮やかに浮かび上がっている。
この模様は「千輻輪せんぷくりん」と呼ばれ、たくさんの車輪が集まったように見える。
この模様は、車輪の外側の円()から中心(こく)まで、すべての部分がはっきりと描かれている。
単なる模様ではなく、仏陀の神聖さを表す重要なしるしの一つ。

【特徴の由来】
仏陀が修行者であった菩薩時代に、父母や師匠、友人から家畜に至るまで、あらゆる存在に対し、財産を惜しみなく布施し、必要なものを与え続けたことで得られたものです。

3. 手足柔軟相

手足柔軟相しゅそくにゅうなんそうの特徴】
仏陀の手足は絹糸のように柔らかく、鮮やかな赤色をしている。

【特徴の由来】
仏様が過去世において、優れた衣服や食事、寝具を師や年長者に供養し、また両親が長期の病気にかかった時に、自ら手を使って体を洗い拭き、手を取り、腕を支え、あるいは体をさすって看護し、奉仕や供養を行ったことで得られた功徳の結果です。

4. 長指相

長指相ちょうしそうの特徴】
仏陀の手足の指は細長く完璧である。

【特徴の由来】
仏様が修行中だった菩薩のときに、師匠や年長者を敬い、礼拝し合掌し、歓喜を起こさせ、また生き物を殺さず、盗みを働かず、傲慢な心を取り除いたことによって得られた功徳の結果です。
そして、この長い指は長寿の象徴であり、すべての人々から愛され敬われ、信頼される姿なのです。

5. 手足指縵網相

手足指縵網相しゅそくしまんもうそうの特徴】
仏陀の指の間には黄金色の水かきがあり、複雑な模様は美しい織物のようである。

【特徴の由来】
仏様が修行中であった菩薩の時に、「 四摂法ししょうぼう」と呼ばれる布施(物を与えること)、愛語(優しい言葉をかけること)、利行(見返りを求めず、相手のためになる行いをすること)、同事(相手の立場に立って物事を行うこと)の四つの方法を実践し、衆生を救ったことによって得られたすぐれた特徴です。
この姿は、水鳥が陸上でも水中でも自由自在に動けるように、仏が輪廻転生りんねてんしょうの世界に飛び込んで衆生を救い、また煩悩ぼんのうや悪業の波を離れて悟りの境地(彼岸)に至らせる、自由自在な救済力を表すものなのです。

6. 足跟広平相

足跟広平相そっこんこうびょうそうの特徴】
仏陀の足の踵は完璧に広く平らである。

【特徴の由来】
これは、仏が過去世において、戒律を守り、聞法し、慈悲の心で施しをするという修行を熱心に行ったことによって得られた姿です。
その結果、仏は長寿を得て、遠い未来に至るまで、すべての衆生を救済するという徳を表しています。

7. 足趺高満相

足趺高満相そくふこうまんそうの特徴】
仏様の足の甲が高く、ふくよかで柔らかい。
その形は亀の甲羅のようで、厚さは四本の指を並べたくらいある。
歩くときに地面に足跡が残ると、その足跡には特別な模様が現れる。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前(因位)、一生懸命に修行を積み重ね、ひたむきに努力したことで得られた素晴らしい妙相です。
この特徴は、仏様が多くの人々を救いたいという深い思いやりの心を持っていることを表しています。
簡単に言えば、仏様の足の特別な形は、過去の熱心な修行の結果であり、同時に、人々を救いたいという仏様の優しい心を示しているのです。

8. 伊泥延膊相

伊泥延膊相いにえんせんそうの特徴】
というのは、仏様の足のふくらはぎは、「伊沢延いざわえん」という鹿のように美しく、ふくらはぎが徐々に細くなって丸くなっている。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前、菩薩のときに、熱心に仏の教えを聞き、そして他の人々にも教えを説いたことで得られた妙相です。
この特徴を見た人々は、喜んで仏の教えを学ぼうという気持ちになります。
また、速やかに修行を始めたいと思うようになります。
さらに、人々のあらゆる罪や障害が消しさるという徳を表しています。

9. 正立手摩膝相

正立手摩膝相しょうりゅうしゅましっそうの特徴】
仏陀が直立しているとき、両手を自然に下ろすだけで、手が膝に届く。
腕が象の鼻のように長く、腕は上を向いたり下を向いたりせず真っ直ぐである。

【特徴の由来】
仏様が因位(菩薩だった頃)に、食べ物や飲み物に足るを知って、貪欲にならず、いつも物を施し、財産を惜しまず、もし病気の人がいれば自ら看護して薬を与えること、子が父に仕えるように、臣が君に仕えるようであって、我慢(慢という煩悩の一つ)から離れたことによって獲得されたすぐれた妙相なのです。
これは、愚かで悪い凡夫を救い出し、苦しみから解放し、喜びを与え、悪魔を降伏して衆生(すべての生きとし生けるもの)を慈しむ徳(功徳)を示すものです。

10. 馬陰蔵相

馬陰蔵相めおんぞうそうの特徴】
仏陀の陰部は清浄で満月のように輝いているが、完全に隠れていて見えない。
これは馬王や象王のようだといわれる。

【特徴の由来】
仏様がまだ修行をしているとき(菩薩のとき)において、恥じ入る気持ちを修めて、邪淫じゃいんの迷いを断ち切り、さらに他人の過ちを隠蔽し、恐れるものを救助し、裸足で歩いている者には衣服と履物を与えたことによって感得された素晴らしい相貌なのです。
そしてこれは、長命で多くの弟子を持つ徳を表したものでもあります。

11. 一一孔一毛生相

一一孔一毛生相いちいちくいちもうしょうそうの特徴】
仏陀の全身の各毛穴から、それぞれ一本ずつ毛が生えている。
その毛は青瑠璃色で、柔らかく潤いがあり、右巻きになっている。
さらに、各毛穴からは微妙な香りが放たれている。

【特徴の由来】
仏様が修行者であった時代に、師匠、両親、兄弟、その他尊重すべき人々をそれぞれ供養し、守護し、善行を積み、真理を思惟し、人々を救うことに倦むことなく、あらゆる智者から学び、さらには道路を掃除して棘や刺を取り除くことを懈怠しなかったことによって得られた素晴らしい特徴です。
その毛穴から放たれる光を浴びた者は、重い罪障を消滅させる徳を表しています。

12. 衆毛上向相

衆毛上向相しゅうもうじょうこうそうの特徴】
仏陀の頭髪と全身の体毛は、すべて毛先が上に向かって靡き、右巻きになっている。
その色は紺青色で、柔らかく潤いがある。

【特徴の由来】
仏様が修行者であった時代に、長い間、衆生を教化して布施持戒、そして一切の善行を行ったことによって得られた素晴らしい特徴です。
この特徴を仰ぎ見る人々は喜びの心を起こし、計り知れない利益をもたらす徳を表しているのです。

13. 細薄身皮相

細薄身皮相さいはくしんぴそうの特徴】
仏陀の身体の皮膚は非常に薄く、潤いがある。
どんな汚れや不浄物も付着しない。

【特徴の由来】
仏陀が修行者であった時代に、清浄な衣服、寝具、楼閣、住居などを残らず惜しみなく施し、また、賢者に親しみ、悪人とは距離を置き、さらに好んで研究を行い、また、道を清掃されたことによって得られた素晴らしい特徴です。
平等で汚れのない大いなる慈悲の心を持って、人々を教化する徳を表しているのです。

14. 真妙金色相

真妙金色相

真妙金色相しんみょうこんじきそうの特徴】
仏陀の全身の皮膚は完全な黄金色で、微妙な香りを放ち、清らかである。
まるで様々な宝物で飾られた素晴らしい金の台座のようである。

【特徴の由来】
仏様が修行者であった時代に、人々が喜ぶ飲食物、乗り物、衣服、装飾品などを施し、常に怠ることなく慈愛に満ちた目で衆生を見つめ、興しがたいものを興したことによって得られた妙相です。
仰ぎ見る人々を愛らしく感じさせ、飽きることなく、また他人の罪を滅して善を生じさせ、自らが清浄な衣服や住居を得るという徳を表しているのです。

15. 七処隆満相

七処隆満相しちしょりゅうまんそうの特徴】
仏陀の両手、両足、両肩、頭頂の7つの部位の肉付きが豊かで、清らかで光り輝いており、柔らかく微妙である。
これは仏陀の完全性と調和を表している。

【特徴の由来】
仏様が修行者だった時代、大切なものも惜しみなく施す福田でした。
その平等に施された功徳によって得られた素晴らしい特徴です。
7つの煩悩を断ち尽くし、7つの聖なる財産を備え、すべての人々の罪を消滅させる徳を表しています。

16. 肩頂円満相

肩頂円満相けんちょうえんまんそうの特徴】
仏陀の両肩の姿は、円満で豊かで、非常に精妙である。

【特徴の由来】
仏様がまだ菩薩だったとき、仏法に従って財を求め布施し、長い間善悪を見分け、さらに仏像を造り、お寺や塔を建てて人々に布施し、常に恥じいる心を持ち続けたことによって感得した素晴らしい相貌です。
この相を見聞きする人々は、煩悩を滅し、を取り除いて、量りしれない功徳を得ることができるのです。

17. 両腋下隆満相

両腋下隆満相りょうえきげりゅうまんそうの特徴】
仏陀の両腋の下の骨格も肉付きも豊かである。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前、修行中の頃に、人々に医療や食事を施し、また親切に病人の世話をしたことによって得られた素晴らしい妙相なのです。

18. 大人直身相

大人直身相だいにんじきしんそうの特徴】
仏陀の体幹は立派で、真っ直ぐである。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前の修行中の頃、長い間、布施をしたり看病をしたりして、病気で苦しむ人々を楽にし、戒律を守ることや仏様に供養をするという徳のある行いを教えたことによって得られた素晴らしい体の特徴であり、お釈迦様を仰ぎ見る人々の心を正しい思念に導き、十善を実践させる徳を表しているのです。

19. 身相端厳相

身相端厳相しんそうたんごんそうの特徴】
仏陀の体型が長く広くして整っており、威厳がある。
また、胸に「まんじ」の徳相がある。
」の徳相については、『観仏三味海経かんぶつざんまいかいきょう』では「胸臆きょうおく字卍字相」(または胸徳字万字相)と言っており、八十種好でも特徴として挙げられている、手足及び胸にある吉祥きちじょう相(すぐれためでたい相)。
この卍字はまた「実相の印」と呼ばれ、それからは広大な光が放たれる。

お寺の地図上のマークが卍なのも、ここから来ています。

20. 身体広長相

身体広長相しんたいこうちょうそうの特徴】
仏陀の身体は左右、上下、縦横の均整が取れており、尼拘律樹にぐろじゅのように円満である。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前の修行中の頃、衆生に三昧(瞑想)を行わせ、布施を行い、病人の世話をしたことによって得られた妙相であり、尊貴で自在な徳を表しているのです。

21. 上身師子相

上身師子相じょうしんししそうの特徴】
仏陀の上半身は獅子王のように堂々としており、立ち居振る舞いに威厳がある。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前の修行中の頃、長い間、一度も二枚舌を使わず、他者に仏法を説き、慈愛と調和を実践してその守護者となり、大勢の人々と共に善行を積み、仏法に従って優しい言葉で接し、慢心を離れていたことによって得られた妙相であり、威厳があり高貴で、慈悲に満ちた徳を表しているのです。

22. 面各丈光相

面各丈光相めんかくじょうこうそうの特徴】
仏陀の体から放たれる光は、四方と上下それぞれ一じん(約1.8メートル)の範囲を照らす。
元々は自然に三千世界を限りなく照らすことができるが、衆生を心配されたことから、光を抑えられている。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前の修行中の頃、誠の心で菩提心ぼだいしんを起こし、無量の誓願を建てて修行し、すべての行いを他者の利益のためになさったことによって得られた妙相であり、すべての外道と悪魔を打ち砕き、衆生の迷いを破り、障害を取り除いて、すべての志願を満たす徳を表しています。

23. 四十歯斉相

四十歯斉相しじゅうしさいそうの特徴】
普通の人の歯は全部で36本のところ、仏陀の歯は40本あり、大きさが揃っていて雪のように白い。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前の修行中の頃、悪口二枚舌を離れ、十善の教えをもって衆生を教化して利益を与え、和合の言葉をもって衆生を導いてくださったことによって得られた妙相であり、常に清らかで素晴らしい香りを放って、衆生の口から生じる悪業を抑止し、罪を滅ぼして安楽を得させる徳が表れているのです。

24. 四牙鮮白相

四牙鮮白相しげせんびゃくそうの特徴】
仏陀は40本の歯の他に、上下にそれぞれ2本ずつ四牙がある。
四牙は白色で、矢じりのように鋭く、ダイヤモンドのように堅固である。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前の修行中の頃、数限りない世にわたって、常に欲界の慈しみの心を修め、善い教えを思惟することを楽しみ望んだことによって得られた素晴らしい体の特徴であり、まさにすべての衆生の強盛で堅固な三毒(貪欲瞋恚愚痴)を打ち砕いて、余すことなく滅ぼす徳を表しているのです。

25. 常得上味相

常得上味相じょうとくじょうみそうの特徴】
仏陀の口は、どんな物を食べても、常に最高の味を味わう。
上味相の上味ということには2つの意味があり、1つ目は大宇宙で最高の味、2つ目はたとえ粗末な味のものでも、仏の口に入ると転じて上味になるということ。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前の修行中の頃、数限りない世にわたって、衆生が必要とする飲食を与え、また衆生を一人の子のように見て、必要とする仏法を悟りを得られるように衆生に廻向し、他者の求めを待たずに施しを与えたことによって得られた妙相です。
すなわち、素晴らしい教えが衆生の願いを満足させる徳を表しているのです。

26. 広長大舌相

広長大舌相こうちょうだいぜつそうの特徴】
仏陀の舌は柔らかく長く、顔全体を覆えるほどで、もし口から出せば、その顔を覆って髪の生え際に達する。
これは仏様は大雄弁によって法を説かれることを表しています。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前の修行中の頃、数限りない世にわたって自ら十善業を修め、また他者が修めるのを見て喜び讃嘆し、衆生を憐れんで誓願を起こし、仏法を教導して実践し、大慈悲をもって法界に廻向し、法味を施し与えたことによって得られた素晴らしい体の特徴です。
これを見る者は、百億八万四千劫の生死の罪を除滅し、この身を捨てて他の世に生まれ変わり、八十億もの諸仏に出会い、菩薩の記別きべつ(悟りを得ることの予言)を受けることができるという徳を表しているのです。

27. 弘雅梵声相

弘雅梵声相こうげぼんじょうそううの特徴】
仏陀の仏の清らかな梵音(仏の声)は、天上の太鼓やカラヴィンカ(迦陵頻伽)の鳥の声のように微妙で最高に優れている。
聞く者は、喜びを感じ、無量の功徳を受け取る。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前の修行中の頃、数限りない世にわたって、自ら悪口を言わず、真実で美しい言葉を説いて人に悪口を言わせず、善い言葉を教え、正しい教えを謗らず、すべての騒がしく悪い言葉を遠ざけ、一切の悪い言葉を制止したことによって得られた妙相です。
そのため聞く者は、自分の器量に応じて利益を得られ、みな善い心を生じて乱れることがなく、迷いを断ち疑いを消し、常に喜びを感じて聞きたいと願う徳を表しています。

28. 牛王相眼睫

牛王相眼睫ごおうげんしょうそうの特徴】
仏陀のまつげは整然としており、立派な牛(牛王)のようである。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前の修行中の頃、善い心と最高の善根の心と敬愛と慈悲の心をもって、すべての衆生を父母のように見て、常に三毒(貪欲瞋恚愚痴)を起こさず、一人の子に対する思いをもって憐れみ愛護したことによって得られた妙相です。
紺青の眼の特徴と共に、仏眼を観じる者は、未来世において、眼は常に清らかで眼の病気がなく、七劫分の罪障を消滅させる徳を表しています。

29. 紺青眼睛相

紺青眼睛相こんじょうげんしょうそうの特徴】
仏陀の目の色は紺色で、青い蓮の花のようである。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前の修行中の頃、生まれ変わりを繰り返す中で、乞者の意に従い、喜びの心をもって眼を施したことによって得られた妙相です。

30. 師子王頰相

師子王頰相ししおうきょうそうの特徴】
仏陀の頬はしっかりとしていて、獅子王のようである。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前の修行中の頃、常に両舌りょうぜつ(二枚舌)を使わず、また他者にも両舌を使わないよう教えたことによって得られた妙相です。
これを見聞きした者は、百劫分の生死の罪を除滅し、直接諸仏を見ることができるようになるという徳を表しているのです。

31. 眉間白毫相

眉間白毫相みけんびゃくごうそうの特徴】
仏陀の眉間には白い毛があり、柔らかくて兜羅綿(きわめて上質な綿)のようである。
これを伸ばすと約4.5メートルになり、収めれば右に巻いて直径三寸(約9センチ)、円周一寸(約3センチ)になる。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前の修行中の頃、衆生が三学(戒・定・慧)を修めるのを見て、その美しさを知って謗らず、読誦どくじゅする者がいれば、それを守護した因縁によって得られた妙相です。
これを見る者は、百億那由他なゆた恒河沙ごうがしゃ劫(非常に長い期間)の生死の罪を除くという徳を表しているのです。

32. 頂上肉髻相

頂上肉髻相ちょうじょうにくけいそうの特徴】
仏陀の頭頂に肉が盛り上がっており、まげのような形をしている。

【特徴の由来】
仏様が悟りを開く前の修行中の頃、心に十善の教えを受け持ち、また、人に教えて受け持たせたことによって得られた妙相です。
衆生の機根きこんに応じて(相手に合わせた)姿を現し、妙なる教えを説くことを表しているのです。

以上が仏の三十二相です。
さらに、この三十二相を詳しくされているものが、八十種好となります。

八十種好の意味

八十種好はちじっしゅごうは、八十種類の特徴と意味で、
八十随相、八十随形好 はちじゅうずいぎょうこう、八十随好ともいわれます。

大般若波羅蜜多経』に具体的に載っています。
分類し、現代語訳すると、以下のようになります。

手・足

  • 1. 如来指爪狭長薄潤光潔鮮浄如華亦銅
    爪は細長く薄くて潤いがあり、美しく清らかで赤銅のように輝いている
  • 2. 如来手足指円繊長直柔軟節骨不現
    手足の指は長くまっすぐで柔軟、関節が目立たない
  • 3. 如来手足各等無差於諸指間悉皆充密
    手足の指の間が隙間なく埋まっている
  • 4. 如来手足円満如意軟浄光澤色如蓮華
    手足は完璧で柔らかく清らかで、蓮の花のように輝いている
  • 5. 如来両踝倶隠不現
    くるぶしが目立たない
  • 6. 如来手掌充満柔軟足下安平
    手のひらは柔らかく、足の裏は平ら
  • 7. 如来手文深長明直潤澤不断
    手相は深く、はっきりしていて途切れがない
  • 8. 如来手足指約分明荘厳妙好如赤銅色
    手足の指の間の膜は、はっきりしていて美しく、赤銅色
  • 9. 如来行時其足去地如四指量而現印文
    歩くとき、足が地面から4本指ほど離れ、足跡が残らない

関節・身体

  • 15. 如来筋脈盤結堅固深隠不現
    筋肉や血管は強くしっかりしているが、目立たない
  • 16. 如来支節漸次円妙善安布
    関節はなめらかで美しい
  • 17. 如来骨節交結無隙猶若龍盤
    骨格はしっかりとしていて隙がない
  • 18. 如来膝輪妙善安布堅固円満
    体つきは完璧で堅固
  • 19. 如来隠処其文妙好威勢具足円満清浄
    隠れた部分も美しく清らか
  • 20. 如来身支潤滑柔軟光悦鮮浄塵垢不著
    体は滑らかで柔らかく、汚れがつかない
  • 21. 如来身容敦粛無畏常不怯弱
    姿は威厳があり、恐れを知らない
  • 22. 如来身支堅固稠密善相属著
    体つきは引き締まっている
  • 23. 如来身支安定敦重曾不掉動円満無壊
    体は安定していて壊れることがない
  • 24. 如来身相猶若仙王周匝端厳光浄離翳
    姿は神々しく美しい
  • 25. 如来身有周匝円光於行等時恒自照曜
    体の周りに光輪がある
  • 26. 如来腹形方正無欠柔軟不現衆相荘厳
    お腹は平らで欠点がなく、美しい
  • 27. 如来臍深右旋円妙清浄光澤
    へそは深く、きれいで光沢がある
  • 28. 如来厚不窪不凸周匝妙好
    へそは凹凸なく、周りも美しい
  • 29. 如来皮膚遠離疥癬亦無黶点疣贅等過
    皮膚に疾患や傷がない
  • 30. 如来容儀能令見者無損無染皆生愛敬
    容姿は見る人に尊敬と愛情を起こさせる
  • 31. 如来身分上下円満如師子王威厳無対
    上半身は完璧で、威厳が獅子のよう
  • 32. 如来身分堅固充実逾耶羅延
    体は堅固で充実している
  • 33. 如来身体長大端直
    体は大きくて均整がとれている
  • 34. 如来諸竅清浄円好
    体の穴は清浄で美しい
  • 35. 如来身支勢力殊勝無与等者
    身長は比類なく優れている
  • 36. 如来身相衆所楽観嘗無厭足
    体つきは人々が喜んで見るもので、飽きることがない
  • 37. 如来身支清浄無垢常無臭穢
    肌は清浄で、悪臭がない
  • 38. 如来身所有諸毛孔中当出如意微妙之香
    毛穴からいつも良い香りがする
  • 39. 如来身毛紺青光浄如孔雀項紅暉綺飾色類赤銅
    体毛は濃い青色で輝いていて、孔雀の首のように美しい
  • 40. 如来自持不待他衞身無傾動亦不逶迤
    自立していて、体が傾いたり、よろめいたりしない
  • 41. 如来威徳遠震一切悪心見喜恐怖見安
    威厳は遠くまで及び、悪人も見て喜び、恐れる者も安心する
  • 42. 如来相好一切有情無能観尽
    姿形は、どんな生き物も見飽きることがない
  • 43. 如来手足及胸臆前 倶有吉祥喜旋徳相 文同綺画色類朱丹
    手足と胸に吉祥の印があり、美しい絵のように朱色である

首より上

  • 44. 如来唇色光潤丹暉 如頻婆果上下相称
    唇は輝いていて赤く、上下が揃っている
  • 45. 如来面門不長不短 不大不小如量端厳
    顔は調和がとれていて美しい
  • 46. 如来舌相軟薄広長如赤銅色
    舌は薄くて広く長く、赤銅色
  • 47. 如来鼻高脩而且直其孔不現
    鼻は高くまっすぐで、鼻孔が目立たない
  • 48. 如来諸歯方整鮮白
    歯は揃っていて真っ白
  • 49. 如来諸牙円白光潔漸次鋒利
    犬歯は丸くて白く、徐々に鋭くなっている
  • 50. 如来眼浄青白分明
    目は澄んでいて、白目と黒目がはっきりしている
  • 51. 如来眼相脩広猶如青蓮華葉甚可愛楽
    目は大きく美しく、青い蓮の花びらのよう
  • 52. 如来眼睫上下斉整稠密不白
    まつげは上下揃っていて、密で白くない
  • 53. 如来双眉長而不白緻而細軟
    眉は長くて白くなく、細かくて柔らか
  • 54. 如来双眉綺靡順次紺瑠瑠色
    眉は美しく、濃い青色
  • 55. 如来双眉高顕光潤形如初月
    眉は高くて輝いていて、三日月の形
  • 56. 如来耳厚広大脩長輪埵成就
    耳は厚くて大きく長い
  • 57. 如来雨耳綺麗斉平離衆過失
    両耳は美しく揃っていて、欠点がない
  • 58. 如来額広円満平正形相殊妙
    額は広くて完璧
  • 59. 如来頭髪脩長紺青稠密不白
    髪は長く濃い青黒色で、白髪がない
  • 60. 如来頭髪香潔細軟潤澤旋転
    髪は香り良く、細くて艶があり、うずを巻いている
  • 61. 如来頭髪斉整無乱亦不交雑
    髪は揃っていて、乱れたりからまったりしない
  • 62. 如来頭髪堅固不断永無落
    髪は丈夫で、切れたり抜けたりしない
  • 63. 如来頭髪光滑殊妙塵垢不著
    髪は滑らかで美しく、汚れがつかない
  • 64. 如来面輪脩広得所皎潔光浄如秋満月
    顔は広くて、秋の満月のように清らかで輝いている
  • 65. 如来顔貌舒泰光顕含笑先言唯向不背
    表情は穏やかで笑みを含み、人に背を向けない
  • 66. 如来面貌光澤熙怡遠離頻蹙青赤等過
    顔色は輝いていて、しわや赤みなどの欠点がない
  • 67. 如来面門常出最上殊勝之香
    顔からいつも最高の香りがする
  • 68. 如来頭相周円妙好 如末達那亦猶天蓋
    頭の形は完璧で、天蓋のよう
  • 69. 如来頂相無能見者
    頭頂部は誰も見ることができない
  • 70. 如来頂骨堅実円満
    頭蓋骨は堅固で完璧
  • 71. 如来顔容常少不老好巡旧処
    顔は常に若々しく、老いない

動き

  • 10. 如来行歩直進庠審如龍象王
    歩き方は堂々として、龍王や象王のよう
  • 11. 如来行歩威容斉蕭如師子王
    歩く姿は威厳があり、獅子王のよう
  • 12. 如来行歩安平庠序不過不減猶如牛王
    歩くときは安定していて、ゆっくりと歩く牛王のよう
  • 13. 如来行歩進止儀雅其猶鵞王
    動きは優雅で、白鷺王のよう
  • 14. 如来迴顧必皆右旋 如龍象王挙身随転
    振り返るときは、体全体で右に回る

声・説法

  • 72. 如来発声威震深遠 如象王吼明朗清徹
    声は深遠で力強く、同時に明るく澄んでいる
  • 73. 如来音韻美妙具足如深谷響
    声は美しく、谷の響きのよう
  • 74. 如来法音随衆不小不増不減応理無差
    声は聞く人に応じて変わることなく、差別がない
  • 75. 如来音声不高不下随衆生意和悦与言
    声は高すぎず低すぎず、聞く人を和ませる
  • 76. 如来能随諸有情類言音意楽而為説法
    あらゆる生き物の言葉や気持ちを理解して、教えを説く
  • 77. 如来一音演説正法随有情類各令得解
    一つの声で正しい教えを説き、聞く者それぞれが理解できる
  • 78. 如来説法咸依次第必有因縁言無不善
    教えを説くときは順序立てて、必ず理由があり、悪い言葉を使わない
  • 79. 如来等観諸有情類讃善毀悪而無愛憎
    すべての生き物を平等に見て、善を褒め悪を批判するが、愛憎がない
  • 80. 如来所為先観後作軌範具足令識善浄
    行動する前によく考え、模範を示して善を理解させる

三十二相八十随形好の深い意味

今回は、三十二相八十随形好のすべてを解説しました。

仏には、三十二相といわれるすぐれた特徴があります。
それは仏の備える仏徳を表しており、それが姿に現れ、三十二相となっています。
さらに三十二相を詳しく、細やかに教えられているものが、八十随形好にあたります。

これら大変優れたお徳を備えておられる仏陀は、2600年前、地球上に現れて、
私たちにどのようなことを教えられたのでしょうか。
それは欲や怒りや愚痴で苦しみつづける私たちに、
本当の幸福とは何か、どうしたら本当に幸福になれるのか、ということでした。

これについては仏教の真髄ですので、メール講座と電子書籍に分かりやすくまとめています。
ぜひ一度見てみてください。

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この記事を書いた人

長南瑞生

長南瑞生

日本仏教学院 学院長
東京大学教養学部卒業
大学では量子統計力学を学び、卒業後は仏道へ。仏教を学ぶほど、その底知れない深さと、本当の仏教の教えが一般に知られていないことに驚き、何とか一人でも多くの人に本物を知って頂こうと、失敗ばかり10年。インターネットの技術を導入して日本仏教学院を設立。著書2冊。科学的な知見をふまえ、執筆や講演を通して、伝統的な本物の仏教を分かりやすく伝えようと奮戦している。

仏教界では先駆的にインターネットに進出し、通信講座受講者3千人、メルマガ読者5万人。ツイッター(@M_Osanami)、ユーチューブ(長南瑞生公式チャンネル)で情報発信中。メールマガジンはこちらから講読可能

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