般若心経の和訳、現代語訳
般若心経
『般若心経』は最もよく読まれているお経です。
その『般若心経』の全文と分かりやすい和訳、現代語訳を掲載します。
『般若心経』の全文には、ふりがな(ルビ)がついているので、読み方も分かります。
さらに一言で言うと、どんなことが説かれているのか解説してあります。
般若心経の全文と読み方(ルビ付き)
まず最初に、以下が『般若心経』の原文(漢文)と読み方です。
仏説・摩訶般若波羅蜜多心経
観自在菩薩・行深般若波羅蜜多時、 照見五蘊皆空、 度一切苦厄。
舎利子。 色不異空、 空不異色、 色即是空、 空即是色。 受・想・行・識・亦復如是。
舎利子。 是諸法空相、 不生不滅、 不垢不浄、 不増不減。
是故空中、 無色、 無受・想・行・識、 無眼・耳・鼻・舌・身・意、 無色・声・香・味・触・法。 無眼界、 乃至、 無意識界。
無無明・亦無無明尽、 乃至、 無老死、 亦無老死尽。
無苦・集・滅・道。 無智、 亦無得、以無所得故。
菩提薩埵、 依般若波羅蜜多故、 心無罣礙、 無罣礙故、 無有恐怖、 遠離・一切・顛倒夢想、 究竟涅槃。
三世諸仏、 依般若波羅蜜多故、 得阿耨多羅三藐三菩提。
故知、 般若波羅蜜多、 是大神呪、 是大明呪、 是無上呪、 是無等等呪、 能除一切苦、 真実不虚。 故説、 般若波羅蜜多呪。
即説呪曰、 羯諦羯諦、 波羅羯諦、 波羅僧羯諦、 菩提薩婆訶。 般若心経
玄奘の翻訳には「遠離・一切」の所の一切がなく、260字ですが、よく広まっているのは、上記のような、一切を加えた262字です。
読経の場合は漢字一つを一拍として読みます。
これを書き下すと以下のようになります。
書き下し文
仏説・摩訶般若波羅蜜多心経
観自在菩薩、深般若波羅蜜多を行じし時、五蘊皆空なりと照見して、一切の苦厄を度したまえり。
舎利子、色は空に異ならず、空は色に異ならず。
色はすなわちこれ空なり、空はこれすなわち色なり。
受想行識もまたまたかくのごとし。
舎利子、この諸法の空相は、不生にして不滅、不垢にして不浄、不増にして不減なり。
この故に、空の中には、色もなく、受想行識もなし。
眼耳鼻舌身意もなく、色声香味触法もなし。
眼界もなく、乃至、意識界もなし。
無明もなく、また無明の尽くることもなし。乃至、老死もなく、また老死の尽くることもなし。
苦集滅道もなし。
智もなく、また得もなし。無所得を以ての故に。
菩提薩埵の、般若波羅蜜多に依るが故に、心に罣礙なし。
罣礙なきが故に、恐怖あることなし。一切の顚倒夢想を遠離し究竟涅槃す。
三世諸佛も般若波羅蜜多に依るが故に、阿耨多羅三藐三菩提を得たまえり。
故に知るべし、般若波羅蜜多のこの大神呪、この大明呪、この無上呪、この無等等呪を。
よく一切の苦を除き、真実にして虚しからず。
故に般若波羅蜜多の呪を説く。
すなわち呪を説いて曰く、
羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶
般若心経
では次に、これを現代の言葉で分かりやすく和訳してみると以下のようになります。
般若心経の分かりやすい和訳・現代語訳
これが『般若心経』の和訳であり、現代語訳です。
観音菩薩が、六波羅蜜 を実践されている時、人間の心身を構成している5つのもの(物質的な肉体、苦楽の感覚、イメージ、意思、認識する主体)に固有の実体はないと知らされて、一切の苦しみを解決された。
舎利弗よ。
物質的なものには実体がない。
では何もないかというとそうではなく、因縁が一時的にそろって物質的なものが生じているのだ。
つまり、物質は実体のないものであり、実体のないものが物質として生じているわけだ。
心身を構成する物質以外の心の4つの働き(苦楽の感覚、イメージ、意思、認識する主体)もまた同じである。
舎利弗よ、一切が空であるすがたというものは、因縁がそろったり離れたりするだけで、
無から有が生じたり、有ったものがなくなったりしているわけではない。
汚れているとか清らかというのも因縁によるもので、汚れた実体や清らかな実体というものもない。
因縁がそろったり離れたりしているだけで、何かが増えたり減ったりしているのでもない。
だから、すべては因縁によって生じている空なるものだから、今あると思っている物質も、因縁が離れればなくなって、別のものになってしまう。
今あると思っている苦楽の感覚、イメージ、意思、認識する主体という心の4つの働きも、因縁が離れればなくなって、別のものになってしまう。
認識の働きも、認識の対象も、認識の主体も、実体がない。
十二因縁の最初の無明にも実体がなく、無明が尽きるということも実体がない。
そこから始まって、十二因縁の最後の老死に至るまで実体がないし、老死が尽きることにも実体がない。
十二因縁のすべてに実体がないし、十二因縁が尽きることにも実体がないのである。
また、苦集滅道の四聖諦にも実体はない。
このように言うと、般若の智慧というのは、「一切が空ということだ」と思うだろうが、そのように頭で理解するようなものではない。
なぜなら何かを知ったり、得たりする私にも実体はないし、得る対象にも実体がないのだ。
菩薩は六波羅蜜を実践して高い悟りを開くとそのような境地に至り、心に煩悩がなくなる。
煩悩がなくなるから、恐怖がなくなる。
一切の逆立ちした考えも、妄想も離れて、究極の涅槃に入る。
過去、現在、未来の一切の仏も、そのように六波羅蜜によって仏のさとりを開かれたのである。
だから知るがよい。
この彼岸に渡る智慧の、
不可思議なまことの言葉、
明らかなまことの言葉、
この上ないまことの言葉、
並ぶもののないまことの言葉を。
六波羅蜜を実践し、彼岸に至る智慧を完成すれば、自分の苦しみも他人の苦しみも本当に除くことができる。
この故に智慧の完成のまことの言葉を説こう。
「羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶」
この意味は、「仏道を求め、完成して、彼岸へ至り、仏のさとりを得た」ということである。
これが『般若心経』の和訳です。
これは、一言で言うと、どういうことなのでしょうか。
般若心経を一言で言うと?
『般若心経』は、一言で言うと、一切は因縁がそろって一時的に生じているだけで、固定不変の実体はないという五蘊皆空を教えられています。
有名な「色即是空」もこの一部分です。
そしてそれを体得できるように、六波羅蜜の実践を勧められています。
「六波羅蜜」とは、次の6つです。
『般若心経』を一言で言ってしまえばこれだけですが、
もっと詳しい意味を知りたい方は以下をご覧ください。
➾般若心経の本当の意味を分かりやすく解説
また、『般若心経』にはサンスクリット語版もあります。
サンスクリット語の『般若心経』については、以下の記事をご覧ください。
➾般若心経のサンスクリット原典と対訳(カタカナの読み方付き)
このように、『般若心経』には深い教えが説かれ、六波羅蜜の実践を勧められているのですが、これも未だ方便の教えです。
お釈迦様は、さらに深く、もっとすばらしい本当の幸せの境地へ導くために、『般若心経』を説かれているのです。
では、お釈迦様が導こうとされている本当の幸せとはどんなものなのか、
どうすれば本当の幸せになれるのかについては、電子書籍とメール講座にまとめておきました。
一度見てみてください。
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この記事を書いた人
長南瑞生
日本仏教学院 学院長
東京大学教養学部卒業
大学では量子統計力学を学び、卒業後は仏道へ。仏教を学ぶほど、その底知れない深さと、本当の仏教の教えが一般に知られていないことに驚き、何とか1人でも多くの人に本物を知って頂こうと、失敗ばかり10年。たまたまインターネットの技術を導入して爆発的に伝えられるようになり、日本仏教学院を設立。科学的な知見をふまえ、執筆や講演を通して、伝統的な本物の仏教を分かりやすく伝えようと今も奮戦している。
仏教界では先駆的にインターネットに進出し、通信講座受講者4千人、メルマガ読者5万人。X(ツイッター)(@M_Osanami)、ユーチューブ(長南瑞生公式チャンネル)で情報発信中。メールマガジンはこちらから講読可能。
著作
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