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阿修羅とは?

阿修羅像
阿修羅像

阿修羅あしゅらといえば、よくマンガやゲームに出てくる、
仏教でも特に人気のキャラクターで、たいてい顔が3つで腕が六本あります。

興福寺の「阿修羅像」も、その美しく哀しい表情が、
とても人気です。

阿修羅について、色々なところで色々いわれますが、
仏教ではどのように説かれているのでしょうか。

阿修羅とは

阿修羅について、参考までに辞書を見てみましょう。

阿修羅
あしゅら
サンスクリット語asuraの音写。
略して<修羅しゅら>。
阿素羅あそら><阿須倫あしゅりん>などとも音写し、また<非天ひてん><無酒神むしゅしん>(いずれも通俗的な語源解釈に基づく)などの漢訳語もある。
血気さかんで、闘争を好む鬼神の一種。
原語のasuraは古代イラン語のahuraに対応し、元来はahuraと同じく<善神>を意味していた。
しかしのちインドラ神(帝釈天たいしゃくてん)などの台頭とともに彼等の敵とみなされるようになり、常に彼等に戦いを挑む悪魔・鬼神の類へと追いやられた。
原語を<神(sura)ならざる(否定辞a)もの>と解する通俗的な語源解釈(漢訳:非天)も、恐らくその地位の格下げと悪神のイメージの定着に一役買ったと思われる。
仏教の輪廻転生りんねてんしょう説のうち、五趣(五道)説では独立して立てられないが、六道説では阿修羅の生存状態、もしくはその住む世界が<(阿)修羅道>として、三善道の一つに加えられている。
仏教ではまた、天龍八部衆(八部衆)にも組み入れられて、仏法の守護神の地位も与えられた。
また密教胎蔵曼荼羅たいぞうまんだら(両界曼荼羅)では、外金剛部院にその姿を見ることもできる。

阿修羅は、悪い神と言われたり、仏法の守護神と言われたりして、分かりにくいですので、
何の神なのか整理して説明します。

修羅道にいる阿修羅

阿修羅は、略して「修羅しゅら」ともいわれます。

仏教では、私たちが生まれ変わり死に変わりを果てしなく繰り返す世界を
6つに分けて「六道ろくどう」といいますが、
その1つが「修羅界しゅらかい」とか「修羅道しゅらどう」といわれます。

それは、争いの絶えない闘争の世界です。

よく、ケンカの絶えない夫婦がいると、
あの家は修羅場だ」といいます。
なぜ好きで一緒になったのに、
争いの絶えない世界になってしまうのでしょうか。
どんな人が阿修羅に生まれるかを知れば、
そのヒントも分かります。

阿修羅はすぐに腹を立て、阿修羅の王を中心として、
仏法を守護するである「帝釈天たいしゃくてん」に
常に戦争をしかけ続けています。
(本来は、その戦場を「修羅場」といいますが、
 それが転じて、特に男女が争った場合に
 「修羅場」といわれます)

そして、みんなが親孝行したり、仏教を大切にしていると、
帝釈天が勝つのですが、
みんなが親不孝だったり、仏教を粗末にすると、
帝釈天は不利になります。

阿修羅は、このように常に神々に戦争をしかけ続け、
敗北し続ける世界です。
みんな軍人(戦闘神)ですので、生傷が絶えず、
戦争で手足を失っていたり、若死にする阿修羅もいます。
雷がなると、帝釈天などの神々の軍勢の打ち鳴らす太鼓かと思って、
あわてふためいたり、恐怖したり、悲しんだりします。

そして、いちいち説明できないほど色々な憂いや苦しみが、
毎日朝昼晩と迫ってくる人間界の1つ下の世界です。

仏教に帰依する阿修羅

経典には複数の阿修羅が登場します。
たとえば『法華経』で有名なのが4人の阿修羅です。

四阿修羅王あり、婆稚阿修羅王・佉羅騫馱阿修羅王・毘摩質多羅阿修羅王・羅睺阿修羅王なり。各若干百千の眷属と倶なり。
(漢文:有四阿修羅王 婆稚阿修羅王 佉羅騫馱阿修羅王 毘摩質多羅阿修羅王 羅睺阿修羅王 各與若干百千眷屬倶)

婆稚ばち阿修羅王
佉羅騫馱からけんだ阿修羅王
毘摩質多羅びましったら阿修羅王
羅睺らご阿修羅王
の4人です。

これらの阿修羅王が、霊鷲山りょうじゅせんという山で、たくさんの従者を連れて、
お釈迦様のお話を聞いていたことが書かれているのです。
これらの阿修羅王は、もとは戦闘神で帝釈天と戦っていましたが、
お釈迦様に帰依したため、このように聴聞していました。

また別のお経には阿修羅が帰依したときのエピソードが書かれています。

お釈迦様へ帰依する阿修羅のエピソード

パーリ仏典の相応部婆羅門相応阿羅漢品の『阿修羅王経』の内容を紹介します。

阿修羅王経』では、お釈迦様を罵るほどのアスラ王のバーラドヴァージャが、
お釈迦様のお言葉を聞いたあと改心し、お釈迦様に帰依し出家した後、
阿羅漢の悟りまで開いたことが書かれています。
尊師とは、お釈迦様のことです。

一 或るとき尊師は王舎城の竹林における栗鼠飼養所にとどまっておられた。
二 阿修羅王バーラドヴァージャ・バラモンは、「バーラドヴァージャ姓のバラモンが<道の人>ゴータマのもとで出家して、家なき状態に入ったそうだ」ということを聞いた。
三 心に喜ばず怒って、尊師のもとにおもむいた。
  近づいてから、野卑な荒々しいことばで、尊師を罵り、非難した。
四 このように言われたので、尊師は沈黙しておられた。
五 そこで阿修羅王バーラドヴァージャ・バラモンは尊師に向かって次のように言った。
――「道の人よ!あなたは負けたのだ。あなたは負けたのだ。」
六 〔尊師いわく、――〕
「愚者は、荒々しいことばを語りながら、『自分は勝っているのだ』と考える。
しかし〔真理を〕識知する人が〔謗りを〕耐え忍ぶならば、かれにこそ勝利が存する。
怒った人に対して怒り返す人は、それによっていっそう悪をなすことになるのである。
怒った人に対して怒りを返さないならば、勝ちがたき戦にも勝つことになるのである。
他人が怒ったのを知って、気をつけて自ら静かにしているならば、その人は、自分と他人と両者のためになることを行っているのである。
理法に通じていない人々は、『かれは愚者だ!』と考える。」
七 このように言われて阿修羅王バーラドヴァージャ・バラモンは、尊師に向かって次のように言った、
――「すばらしいことです。ゴータマさん!すばらしいことです。譬えば、倒れたものを起こすように、覆われたものを開くように、方角に迷ったものに道を示すように、あるいは『眼ある人々は色やかたちを見るであろう』といって暗闇の中で灯火をかかげるように、ゴータマさんは、種々のしかたで真理を明らかにされました。だからわたしは尊師ゴータマに帰依いたします。また、真理の教えと修行僧の集いに帰依いたします。わたしはゴータマさんのもとで出家し、正式の戒律を受けたいのです」
阿修羅王バーラドヴァージャ・バラモンは、尊師のもとで出家し、正式の戒律を受けることができた。
正式の戒律を受けてからまもなく、罵る者であったバーラドヴァージャさんは、独りで隠棲し、怠ることなく努め励んでいたので、まもなく、立派な人々がそのために正しく家から出て家をもたぬ状態におもむくところのその無上なる清浄行の完成を、まさにこの世において自ら知り体得し具現して住していた。
――「生存は消滅した。清らかな行いを実践しおえた。なすべきことは、なしとげた。もはやさらにこのような状態におもむくことはない」ということを理解した。
八 さてバーラドヴァージャさんは、敬われるべき人々の一人となった。

このようにお釈迦様に帰依した阿修羅の1人が、後に八部衆の阿修羅となったのだろうといわれます。

阿修羅のご利益

阿修羅は、八部衆に選ばれていますが、
八部衆とは、仏法を守る8人の守護者のことです。
阿修羅も八部衆の1人なので、阿修羅のご利益は、仏法を護ることです。

さらに阿修羅は、阿弥陀仏に救われた人を夜昼護るとも言われています。

南無阿弥陀仏をとなうれば
梵王帝釈帰敬す
諸天善神ことごとく
よるひるつねにまもるなり

阿弥陀仏については、こちらの記事もお読みください。
阿弥陀如来とは?簡単に分かりやすく解説

阿修羅の特徴


阿修羅の特徴は、よく三面六臂さんめんろっぴ(三つの顔と六つの腕)と言われます。
上記の画像は、奈良県興福寺こうふくじ阿修羅像【八衆部】を復元したものです。

三面六臂

三面とは、阿修羅には三つの顔があり、
右脇面が怒り、左脇面が苦悩、
正面がお釈迦様の教えを聞いて悟りを開いた顔を表しています。

次に六臂は、六つのひじと書き、
手が六本あることで、これは多くの働きをすることを表しています。

修羅道に堕ちる行い

今回は、阿修羅について整理して解説しました。

阿修羅とは、修羅界で帝釈天と戦い続けている戦闘神で、
常に戦々恐々としていて、怒りのままに苦しみ続けています。
私たちも修羅界に堕ちたら阿修羅となるのです。

ではどんな原因によって、阿修羅(修羅界)に生まれるかというと、
怒りと、自惚れと、疑いによると説かれています。
夫婦ゲンカも、すぐに腹を立てたり、
相手を見下したり、疑ったりすると、起きやすいので、
このあたりを注意しないといけないかもしれないですね。

また、六道輪廻ろくどうりんねを完全に断ち切るには、
六道輪廻の根本原因をなくさなければなりません。
その迷いの根本原因は、仏教にしか説かれていません。

また阿修羅は、仏教を聞いてお釈迦様に帰依し、
八部衆として仏教を護る守護神となった者もいます。
阿修羅の心を変えさせた教えは、どのようなものだったのか。

迷いの根本原因と解決方法や、仏教の真髄については、
分かりやすいように、メール講座と電子書籍にまとめておきました。
一度見てみてください。

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この記事を書いた人

長南瑞生

長南瑞生

日本仏教学院 学院長
東京大学教養学部卒業
大学では量子統計力学を学び、卒業後は仏道へ。仏教を学ぶほど、その底知れない深さと、本当の仏教の教えが一般に知られていないことに驚き、何とか一人でも多くの人に本物を知って頂こうと、失敗ばかり10年。インターネットの技術を導入して日本仏教学院を設立。著書2冊。科学的な知見をふまえ、執筆や講演を通して、伝統的な本物の仏教を分かりやすく伝えようと奮戦している。

仏教界では先駆的にインターネットに進出し、通信講座受講者3千人、メルマガ読者5万人。ツイッター(@M_Osanami)、ユーチューブ(長南瑞生公式チャンネル)で情報発信中。メールマガジンはこちらから講読可能

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